平成14年3月25日、7年前に使った平幡良雄著「四国へんろ」を頼りに、車で四国 遍路に出た。四国遍路の本は数多く出版されているが、この本が一番良く出来ていて、地図もわかりやすい。
西国33観音や49薬師などは「巡礼」で、四国霊場は「遍路」というらしい。
2年前、年甲斐もなく「歩き遍路に挑戦」と意気込み、初日は6番札所の安楽寺に泊ま った。安楽寺が主宰する「四国巡礼バスツアー」に毎年参加しているという大阪の団体 のお遍路さんから、「歩くよりも何回もバスで遍路した方がよい」と言われたことが頭 に残る。11番まで廻ったところで足の親指の爪をはがし、歩き遍路を断念した。
今回 はそれのやり直し遍路で、観光も兼ねた罰当たりの「車遍路」である。
今年は桜の咲くのが10日ほど早く、どの寺も桜が満開で、花吹雪に迎えられるまさに 「花遍路」で嬉しくなってしまう。
7年前と比べると、NHKの影響なのか、定年を過ぎた夫婦の遍路や、若者の「歩き遍路」 が目立ち、女性の「歩き遍路」も多く見かけた。
車遍路も多く、特に7,8人乗りのワ ゴン車に便乗して遍路する60歳の後半から70歳代が多い。山の上にある寺までの道 では、7年前には無かった「車遍路の道」と書かれた標識を見かけ、「歩き遍路」に対 し、「車遍路」という言葉が定着していると思った。
広島から来た3人連れのドライバーは80歳だという。心配も兼ねて「すごいね」と言うと、「もう4回も廻っているから」と胸を張る。
札幌ナンバーの4Wに乗った人も70 歳前半であった。フェリーで大洗まで来て、そこから、常磐道、東名神、本四公団神戸 鳴門ルートを走ってきたそうだ。
地元の人から「お四国さん」と言われる四国遍路は全行程1500キロ、山の寺の場合、 駐車場までの道路はすれ違いが難しい急な上り坂ばかり、そこをワゴン車や4Wのランクルで走るのだから、ものすごい老人パワーに感心する。
7年も経つと道路は整備されバイパスも出来ている。
新しい道路には必ず寺の案内標識があり、標識どうりに走ると、「こちらだよ」と、まるで寺が道案内してくれるように 自然に着いてしまう。おかしなもので「このまま走っていいのか」と疑がうと飛んでも無いことになってしまう。宗教は疑ってはならない信じることだと実感する。
前回は写経をしてそれを写経箱に入れたが、今回は納札
に住所氏名を書いて納札箱に入れるだけにした。納札は遍路回数に応じ、白(4回まで)、青(7回まで)、赤(24回まで)、銀(49回まで)、金(99回まで)、錦(100回以上)のお札を納める。
23番札所薬王寺で「錦」のお札が納札箱に入っていた。寺の近くの「やすらぎ」といううどん屋(ここのゆずちらしとミニうどんセット500円は四国遍路で一番美味
しかった)に錦のお札が額に入れて飾ってあったので尋ねた。錦の札を使う人は全国に300人ほどいて、寺では誰だか分かっているのだそうだ。
100回以上も廻っている人は、それだけ徳をつんでいるのだから、「錦の札はお守りになる」と、お遍路さんたちが納札箱の中を探し持っていくので、滅多に見つかるものではないと言う。
この時期、遍路ツアーの観光バスが多く、ツアーの案内役が一度に30冊もの納経帳やお軸を納経所に持ち込む。個人の巡礼者を先にしてくれる寺もあるが、個人より団体の遍路を大事にする寺もあり、朱印を貰うのに30分から1時間も待たされてしまう。「朱印を貰うのが大変だから」と先に納経所に行く人が多い。
納経所には午前7時から5時までと書かれてある寺が多くなったが、四国巡礼の寺の納経所は、全て、7時から17時までと決まっているらしい。ゆっくり境内を見て回ろうと思っても四国遍路はどういう訳か西国33観音や49薬師と違って、15分くらいで先を急いでしまう。回る寺が多いせいなのだろう。
「しまなみ街道のちかくに行くのだから」と、尾道に足をのばした。途中、生口島にある耕三寺に立ち寄った。境内は桜が満開で月曜日なのに観光客であふれていた。
尾道の千光寺山は山全体が桜で、満開の吉野山を思わせる。明くる日はフェリーで向島に渡った。5分ほどで着く。二人と車で160円の安さに驚いた。逆U字形の柱の上にわせるフェリーで、フェリー待ちの車が乗り終わると出発する「車の渡し船」である。
大島から今治へは来島海峡を渡るフェリーに乗った。高速道路を走ると2050円のところを1200円で渡れる。潮の流れが速く、特に急流のところはフェリーが避けて通る。高速道を走るのもいいが、フェリーでゆっく
り瀬戸内の景色を楽しむのも良いものだ。
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