私なりの「オペラ名作選」そのストーリーと名曲ー
歌劇「アイーダ」のストーリー
作曲 ジュゼッペ・ヴェルディ
初演 1890年 カイロ歌劇場
時代場所 紀元前1500〜1300年位のエジプトメンフィス及びテーベ
主な登場人物
奴隷(エチオピア王女)アイーダ(s)、その恋人エジプト軍の将軍ラダメス(t)、彼を恋するエジプト王女アムネリス(ms)、祭司長ランフィス(b)、エチオピア王アモナスロ(br)
物語
第1幕 メンフィスにある宮殿の中
祭司長ランフィスと将軍ラダメスが登場し、「エチオピア軍がナイルの谷に攻めてきた。イージスの神のお告げにより総指揮官にラダメスが任命されるだろう」とランフィスから聞かされたラダメスは、任務の決意と愛するアイーダへの思慕を歌う有名なアリア「清きアイーダ」を歌います。
清きアイーダ (テノール:ラダメス)
「もし私がなったら、勇猛な軍隊を率い、敵を打ち破って見せる。愛しいアイーダよ、君のために戦い、勝つ。清らかなアイーダ、その神秘の美しさは私の女王、私の生涯の栄光だ、君の額に王冠を飾り、太陽まで高く昇らせたい。ああ、清きアイーダ、清らかな姿よ」
そこにラダメスを恋する王女アムネリスが入ってきます。アムネリスはラダメスがアイーダに深い愛情に持っていることを直感し嫉妬します。王女の奴隷アイーダが来ました。アイーダとラダメスの雰囲気からアイーダが恋敵ではないかと疑いをもったアムネリスは、やさしい言葉で探りを入れます。エジプト王が登場し、続いて祭司長、大臣、祭司、将軍達が入ってきました。使者が「エチオピア軍がテーベに迫っている」と告げます。王の「いざ、戦わん」の声に、全員が剣を上げて呼応します。そして、「イージスの神のお告げ」とラダメスをエチオピア討伐軍の総司令官に任命し、一同は「戦いだ、戦いだ」と気勢をあげます。アムネリスはラダメスに「勝ちて帰れ」と軍旗を渡し、兵士達は戦場に向かって行きます。一人残ったアイーダは「リトルナヴィンチトール」と有名なアリア「勝ちて帰れ」を歌います。
勝ちて帰れ (ソプラノ:アイーダ)
「勝ちて帰れ。こんな忌まわしい言葉を私が口にするなんて。父は身分を隠し囚われた私を取り戻そうとしてくれるのに、父を討て、兄弟を討てとは。あの人が身内の血を浴びて帰ったらエジプトの王宮は勝利に湧き立ち、お父様は繋がれ。ああ、神様、私を父の胸に返してください。敵を打ち砕いてください。私は何を言っているのかしら、囚われの私を幸せにしてくれたあの人、こんなに愛してる人の死を願うなんて、こんなむごいこと、私は死んでしまいたい。ああ、神様、ご慈悲を」
第2場 メンフィスの火の神の神殿
祭司長ランフィスと祭司が立ち並び、奥から巫女達の神聖な合唱「全能の神フター」が静かに流れ、巫女達が戦勝を期して踊るなか、ラダメスが家来を連れて現れランフィスの前に進みます。ラダメスの頭にヴェールがかけられ巫女が剣を持ってきます。ランフィスは巫女から剣を取ってらダメスに与え武運を祈ります。
第2幕 宮殿のアムネリスの部屋
女奴隷に囲まれたアムネリスはラダメスの凱旋を待ち望んでいます。女奴隷は「若い奴隷達の踊り」を踊っています。そこへ月桂冠を持ってきたアイーダに激しい嫉妬心を駆られますが、やさしい言葉で「お前の祖国は敗れた、悲しいだろうが、私が面倒を見てあげるから嘆かないように。ラダメスは死んでしまったけど」と言います。悲嘆したアイーダを見て、憎々しく「ラダメスを慕っているね、今のは嘘、私はラダメスを愛している、奴隷のお前が王女の私と争うことはできない、あきらめよ」と吐き棄て、去っていきます。アイーダはラダメスが生きていることを喜び神に感謝の祈りをします。
第2場 凱旋の場
群集が集まるなか、国王が大臣、祭司、将軍達を連れ、アムネリスがアイーダや女奴隷を連れて入ってきます。王は玉座に、アムネリスがその左に座ります。エジプトの栄光、神々に感謝の大合唱が終わり、トランペットによる凱旋行進曲が流れるなか、凱旋した兵士達とエチオピアからの戦勝品の数々が運びこまれ、最後にラダメスが入場します。王は玉座から降りラダメスに抱擁し、アムネリアが月桂冠をラダメスの頭につけます。王は「汝の欲するものを与えよう」告げます。ラダメスは「捕虜達をここに連れてきてください」と願います。エチオピアの捕虜達が引き出され、その中にエチオピア王アモナスロがいました。父を見つけたアイーダは「おとうさま」と叫び駆け寄りますが「身分を知られてはならぬ」とささやき、王に向かって「エチオピア王は戦死したが明日には逆転しますぞ」と叫びます。「皆殺しにしろ」と祭司が叫ぶなか、ラダメスが「捕虜を自由にしてやってください」と王に願い出ます。王は承諾し、アイーダの父だけを人質に残し全員を開放するよう申し付け、ラダメスに向かって「アムネリスを妃としエジプトを治めと」と命じます。一同は歓声を上げ、アイーダは悲しみに震え、父アモナスロは優しく慰めます。
第3幕 ナイル川河畔の神殿の前
奥まった神殿から祭司たちの祈りの歌「オリシスの神よ」が聞こえます。祭司長ランフィスとアムネリスは「夜が明けるまでお祈りを」と結婚前夜の祈りのため神殿に入って行きます。アイーダがラダメスに会うために来てアリア「わがふるさと」を歌います。
わがふるさと (アイーダ)
「ラダメスが来てなんと云うのかしら、恐ろしい、もしあなたが最後の別れを云いに来るなら、このナイルの渦が私の墓。ああふるさと、青い空、甘いそよ風、幼い頃の日々、緑の丘、もう二度と見ることはないのだわ」
突然、父アモナスロが姿を見せ「大事な用があって来た」から始まる祖国のためにラダメスから軍事機密を聞き出せと命じる父と娘の愛憎を歌います。
大事な用があって来た (バリトン:アモナスロ、ソプラノ:アイーダ)
「大事な用があって来た、お前はラダメスを愛し、ラダメスもお前を愛している。やつがここにくる事は分かっていた。お前がその気になれば、愛する男の花嫁となり故郷も、玉座も手に入るのだ。家や、神殿を壊し、親子老人を殺した残忍なエジプト軍に勝てる準備は出来た。エジプト軍が通る間道が分かれば、必ず勝利する」。「誰が聞き出せましょう」、「お前だ」、「恐ろしい、何てことをおっしゃるの、ダメです、決して」、「判った、エジプト軍よ、我が街を焼き払え、血の海とせよ」、「ああお父様」、「もはや娘ではない」、「お願い許して」、「死者がお前を指差して、祖国はお前のために死んだと」「ああ、お父様、許して」「亡霊が、肉のない腕をお前の頭にのせる、よく見ろ、それがお前の母だ」「やめて、お願い」「お前は娘ではないエジプトの奴隷に過ぎぬ、呪うぞ」「お願い許して、私は奴隷ではありません、呪わないで、私はお父様に娘と呼んでほしいの、祖国にふさわしい女になリます」、アモナスロは「やつが来る」と物陰に隠れます。
ラダメスが現れ、アイーダにやさしい声をかけ手を差し出しますが、「王女と結婚するのね」とアイーダ、「再びエチオピアが挙兵した、勝利したあかつきには王に二人の事をお願いしよう」、「それよりも、二人で間道を逃げて新天地で暮らしましょう」、「兵のいないナバタの谷を通ろう」とラダメスが云ったとき、物陰からアモナスロが飛び出し「エチオピア軍をナバタに向けよう」と叫びます。驚いたラダメスは祖国を裏切ったことに気がつきます。「アイーダと一緒にエチオピアに来てくれ、王として迎える」とアモナスロはラダメスを説得します。そこへ神殿で一部始終を見ていたランフィスとアムネリスは兵を連れて現れます。アモナスロは剣を抜き戦おうとします。ラダメスはこれをさえぎってアイーダとアモナスロを逃がし、ランフィスに跪きます。
第4幕 宮殿の広間
アムネリスは「アイーダは逃亡しもういない、ラダメスが彼女を諦めるなら許そう」と歌い、投獄されているラダメスを連れてこさせます。「あなたはまだ弁明する機会があります」と翻意を求めますが、ラダメスは「私はアイーダを愛するが故に祖国を裏切りました」と述べます。「その後の戦いでアモナスロは戦死し、アイーダは行方不明です」と伝えラダメスに「アイーダを諦めたら命は助ける」と云いますが、「無駄です」、「死にたいということですか」。「覚悟は出来ています」、「私の涙の復讐を神がしてくれるでしょう」、「彼女のために死ねるなら、こんなすばらしいことはない」、「私のほかに誰があなたを救えましょう」、「恐れるものはありません、あなたが、情けをかけてくれるあなたが恐ろしいのです」。アムネリスは落胆して倒れ付し、ラダメスは地下牢に引かれて行きます。地下から「敵に秘密を漏らした罪により生きながら祭壇の下に埋める」というランフィス達祭司の裁きの声が聞こえます。アムネリスは恐ろしさに打ち震え、地下牢から上がってきたランフィスに助命を懇願しますが、「彼は裏切り者です」と聞き入れません。アムネリスは祭司達を呪い、絶望して去ります。
第2場 上段に神殿、下段に神殿の地下の墓場
神殿の地下の墓、ラダメスが「運命の石が閉ざされ」と歌いアイーダとの感動的な二重唱へと続きます。
運命の石が閉ざされ (ラダメス、アイーダ)
「運命の石が私の上で閉じられている、ここは私の墓場だ、日の光は二度と見ることはない、アイーダにも会えない、お前はどこにいるのだろう、お前だけは私のこの恐ろしい運命を知らずに生きてくれ、何の物音だろう、魔物か、幻、いや人影だ」、「私です」、「アイーダ」、二人は熱く抱擁し「なぜこの墓場に」、「虫が知らせてくれました。この墓のふたが開いていたのでそっと忍び込み、隠れていました、あなたに抱かれて死にたいから」、「うら若い君が私の愛のために死ぬ、天は愛するために君を作られたのに、私は愛されるために君を殺してしまう。君は美しすぎる、死んではいけない」アイーダはラダメスに抱かれ、恍惚として「見える、黄金の翼を広げて天使が近づいてくるわ、天の扉が開き、そこに連れて行ってくれるの、不滅の愛、恍惚の愛が始まるわ」。上段の神殿では僧侶達の葬送の歌が歌われています。二人は抱き合い、幸せに満ちて、感動的な「さようなら大地」を静かに歌います
さようなら大地 (ラダメス、アイーダ)
「さようなら大地、さようなら涙の谷、天は私達に扉を開いている、私達の魂は永遠の日の光に向かって飛んでいける、さよなうら大地よ、さようなら涙の谷よ」。上段の神殿ではアムリネスがイージスの神に捧げる祈り「安らかに、愛する二人の魂を天に召したまえ」を荘厳に歌い、墓の奥深くに進み、アレーナ全体が一瞬真っ暗になる感動的なフィナーレで歌劇「アイーダ」が終演します。
終幕は極めて感動的でした。
2001年7月5日アレーナ・ディ・ヴェローナの「アイーダ」観劇記へ
「私のライブラリー」
1989年メトロポリタン(ミッロ、ドミンゴ)
1983年アレーナ・ディ・ヴェローナ(キアーラ)
1999年アレーナ・ディ・ヴェローナ