道の駅の建設に関わる提言(平成10年5月)
1.施設のイメージと設置場所
施設は、明るく力強い活性化のイメージを感じるものが望まれます。一見してトンネルとか近代的な城を思わせる駅がありますが、暗いイメージで、活性化の施設には不向きに思われます。いかにソフトで活性化を表現しても、ハードの暗さは付きまといます。施設全体、なにもかもが、明るく、ゆとりを感じるものが設計の原点だと思います。設計者は時には依頼者の利益優先を忘れ自己主張を優先してしまう場合があります。トンネルのイメージはそんな感じがします。また道の駅は立地条件を十分配慮し、国道だからとの理由で、主要地方道より交通量の少ない場所に設置するのは考えものです。このような例がいくつかありますが、どれも集客性に疑問が残ります。多分、立派な地方道が後から整備された結果だと思うのですが、計画性の配慮に欠けた結果かも知れません。
2.施設の一体化について
玄関ホールを中心にレストラン、土産物売場、トイレが一体となった活性化施設の道の駅をよく見かけますが、何故か休憩室、道路情報ステーションは独立した施設です。情報ステーションという独立の休憩施設に、優れた情報提供システムを整備しても、見に来る人は限られ、誰もいないのに大型テレビがついているとの批判を受けます。情報は多数の人に提供して知らぬ間にインプットされている提供の仕方にその効果があるわけですから、知りたい人だけ見に来ればよいとも受け取れる配置はいかにもお役所的です。地域活性化施設については自治体が建設する訳ですから、自治体が負担しない道路管理者の整備する施設については、基本設計の段階で、考慮がされていない結果だと思います。玄関ホールを中心にレストラン、土産物売場、トイレを配置する活性化施設の一体化について、玄関ホールにベンチを配置すれば建設省の活性化支援事業(道路整備、駐車場の建設、トイレ、休憩室、道路情報装置)の休憩室ですし、情報コーナーを配置しトイレを隣接する設計にすれば、これらの部分については建設省の支援事業ですから自治体の費用はかかりません。補助事業はいろいろ法律の規制があり、不合理もありますが、それを解決するには時間が掛かります。要するに区切りの問題ですから、工夫すれば時間をかけることなく不合理は解消します。建築設計者は各省庁の支援補助事業の仕組みを熟知した上で、依頼者である自治体の利益を十分に考慮した基本設計が望まれます。デザイン上の制約の解消は設計技術の範疇だと思います。(三重県御浜町の道の駅「パーク七里御浜」はスーパーマーケトとの一体化が行われています。)
3.気配りのあるトイレ
トイレは観光バスの乗客には欠かせない重要な施設です。気配りと工夫を凝らしたトイレはそれだけで集客効果を上げます。北海道喜茂別町道の駅「中山峠」のトイレに行き驚きました。トイレに玄関がありホールがあったからです。ベンチやベビーベットを見つけ、此処がトイレの待合室であることに気がつきました。ベンチは「ご家族やお仲間との僅かな待ち合わせ時間にご利用下さい」、ベビーベットは「旅行中赤ちゃんのオムツ換えは大変でしたでしょう」、ショウウィンドの中には、近くに咲いている思われる草花の鉢が一杯置いてあり、可憐な花々が「旅行中お疲れでしょう」と、すべてのものが話しかけてくるような気がしました。すべてが明るいことは言うまでもありません。一事が万事、この町の訪問者に対する思いやりの深さ、活性化の意気込みのすごさに感服し、大ファンになりました。