「私なりのオペラ名作選」そのストーリーと名曲

 

    歌劇「セヴィリアの理髪師」のストーリー (イタリア語) ロッシーニ 

       実に楽しく、重唱がすばらしいオペラです

<初演>  1816年(江戸時代後期)ローマ、アルジェンティナ劇場

<登場人物>

アルマヴィーヴァ伯爵(貧しい学士と偽ってロジーナに恋を告白する:テノール)

医師バルトロ(ロジーナの叔父で後見人、ロジーナとの結婚を熱望している:バス)

ロジーナ(バルトロの姪で未成年:メゾソプラノ)

フィガロ(何でも屋の理髪師、伯爵の恋の手助けをする:バリトン)

バジリオ(ロジーナの音楽教師、バルトロの結婚計略に手を貸している:バス)

<時代・場所> 18世紀 スペイン、セヴィリア

(1)序曲

<第1幕第1場>

早朝のセビリアの街角、ロジーナに思いを寄せる伯爵が辻音楽師たちと一緒に「静かに、静かに」と歌いながら登場し、ロジーナの後見人で医師のバルトロの家のバルコニーに向かって

(2)空はほほえみ(伯爵:テノール)

「空はほほえみ、暁は昇り始める、君は今だ夢路をたどるか、愛しい人よ、目覚めてくれ、この愛をあわれみたまえ」と恋の歌を歌いますがロジーナは現れてくれません。(伯爵という身分の自分を愛してくれるのではなく、個人を愛してくれる女性を求めて、伯爵はセビリアにやってきたのです)あたりが明るくなり辻楽師達を返します。そこへこの町の理髪師フィガロが歌いながらやってきます。

(3)俺は町の何でも屋(フィガロ:バリトン)

「俺は町の何でも屋、腕の立つ床屋、はさみ、かみそり、くしを自由に扱うように、どんな頼み事も解決する、方々から声が掛かり、俺の人生はすばらしい」

伯爵はフィガロに声を掛け、伯爵という身分を隠してロジーナとの恋を成し遂げるための手助けを依頼します。

バルコニーの鎧戸が開き、ロジーナが姿を見せ手紙を落とします。階下の窓から見上げていたバルトロ(未成年のロジーナの後見人で彼女との結婚と彼女の財産の両方を手に入れようとしている叔父の医師)がいぶかりますが、ロジーナは「無益な用心」と言う詩を書いたものだが誤って落としたと言い訳します。バルトロが拾いに出る間に、伯爵は手紙を拾い、物陰にかくれます。手紙を拾いにきたが無いのに疑いを持ったバルトロはロジーナの部屋へ戻ります。手紙には「かなしいかごの鳥に、お心を掛けて下さる方のお名前をお知らせ下さい」と書いてあります。やがて扉が開き、「ロジーナを見張るように」と召使いに命じてバルトロ先生は外出します。

伯爵は、フィガロのすすめでギターを片手に、バルコニーに向かって歌います「私の名前が知りたければ名乗ります、私の名前はあなたに恋している貧しい学生のリンドーロです」。ロジーナが姿を見せますが、召使いに見つかりかくれてしまいます。伯爵は「ロジーナに会いたいがどうすればよいか」とフィガロに尋ねます。フィガロは

(4)金を見れば知恵がわく(フィガロ:バリトン)

「金を見れば知恵がわく、この不思議な力を持つ金属のことを考えると、俺の心は、火山のように燃え始める、わいてきたぞ。」と言って謝礼を要求し、「殿様、今日は連隊がこの町に着き、民宿することになっているので、兵士に変装して、酔った振りをして宿泊を要求しなさい、酔った振りをすればバルトロの警戒心が薄れます」と策を授けます。伯爵は、「妙案だ、連隊長は友人だ」、「それは好都合、宿泊状を貰って下さい」、「いっぱいつまった財布を」、「欲しいだけやるぞ」、伯爵は「ああ、なんと愛の炎を感ずることか、愛の予告に自信がわく」と見通しが明るくなったことを喜び、フィガロは「銭の音が聞こえるぞ、金がポケットに落ちてくる、心は燃えさかる」と大金を手にして大喜びし、二人が意気投合する合唱で、第1場が終わります。

<第2場>

バルトロ邸の広間、「貧乏学生のリンドーロ」との「恋の告白」の歌を聴いたロジーナは、心の高鳴りを覚え、返事を書いた手紙を手に有名なメゾのアリアを歌います

(5)今の歌声は(ロジーナ:メゾソプラノ)

「今の歌声は、リンドーロとおっしゃた、私は心が高鳴ります。、リンドーロ様は私のもの、あのやきもちやきの後見人はきっと拒むけど、勝ってみせるは、策を持っても」。そこにバルトロが帰ってきます。ロジーナの音楽教師で老人のバジリオがきて、バジリオに「伯爵がロジーナを手に入れるため町にやってきているので醜聞をまいて追い返しましょう」と、すばらしいバスのアリアを歌います

(6)陰口はそよ風のように(バジリオ:バス)

「陰口は、そよ風のように、初めは心地よくつぶやく、脳味噌に入って膨張し、口から外へ出て、次第に力をまして、一人歩きし、そして嵐のように吹き荒れ、大砲や、地震のように、大地をゆるがし、中傷されたやつは、はずかしめられ、踏みつぶされる」とバジリオが話しますが、伯爵がロジーナをねらっていると聞いたバルトロは「早く結婚した方がいい」といって、策を練るためにバジリオと自分の部屋に入ります。広間の物陰にかくれていたフィガロが出てきてロジーナに「さっき歌った男は恋に悩んでいる、恋いこがれる相手の名はロジーナ」と言い、ロジーナは大喜びします

(7)本当かしら(ロジーナ)

「ほんとかしら、だましちゃいやよ、リンドーロ様と話するにはどうしたらいいの」、「もうすぐリンドーロがここに来ます」「私と話すためにいらっしゃるの、すてきだわ、どうやってみえるのかしら」。

フィガロは手紙を書くように勧め、ロジーナは恥ずかしそうに書いてあった手紙を渡し、フィガロはそれを持って帰ります。そこへバルトロが入ってきて、「フィガロに手紙を渡した筈だ」、「書いてないわ」、「老人を侮ってはいけない、6枚だった便せんが5枚になっている」、「フィガロの姪にぼんぼんを包んで渡した」「指にインクが付いているぞ」「ランプでやけどしたのでつけたの」などロジーナを追求し、ロジーナは言い訳しますが、バルトロは

(8)医者のような私に向かって(バルトロ:バス)

「医者のような私に向かって、そんな言い訳はきかないよ、便せんが5枚になったことを白状しなさい、言わないのかい、私にも覚悟があるぞ、部屋に閉じこめ、外の空気が入ってこないようにするぞ、わしはだまされんぞ」。

そこへ軍人に変装した伯爵が酔った振りをして入ってきて、「今夜はここを宿泊場所とする」と宿泊証明書を見せますが、バルトロは宿泊免除の証明書を出して断ります。酔っている偽兵士はそれを取り上げ破いてしまい、現れたロジーナにそっと手紙を渡します(自分は兵士に変装したリンドロだと書いてあります)。酔った振りの兵士がロジーナに近寄るのを見たバルトロは怒りだし、酔っぱらい兵士(伯爵)は「戦争ごっこをするのか」と暴れ出します。フィガロが入ってきて止めようとしますが、騒ぎを聞きつけた巡回兵が入ってきます。お互い罪のなすり合いしますが、隊長は「悪いのはこの士官」と言って連行しようとします。偽兵士はそっと隊長に身分を明かす紋章を見せます。隊長をはじめ巡回兵たちが、突然、直立の姿勢をとります。バルトロは仰天しますが、気を取り直し、隊長に訳を聞きますが、隊長は相手にしません。再び、罪のなすり合いの大騒動

(9)頭はまるでふいごの中のよう(バルトロ他全員の合唱)

「頭はまるでふいごの中のよう、休む暇なく、あれやこれやと鳴り響き、何が何だか分からず、ゴチャゴチャになって、頭が痛くなる」の合唱で第1幕が下ります。

<第2幕>

バルトロが広間で「あの兵士は伯爵のスパイかも知れない」と独り言を言いいながら歩き回っているところへ、音楽教師バジリオの弟子ドン・アロンゾと名乗る男が、「先生は急病なので代理で稽古にきた」と言って、ロジーナがリンドーロに出した手紙を見せ、「伯爵から手に入れた」と言って渡すので、バルトロはドン・アロンゾと名乗る男を信用し、ロジーナを呼びます。ロジーナは、音楽教師が変装したリンドーロ(実は伯爵)であるのに驚き、喜び、レッスンを始めます(有名なレッスンの場面)。

フィガロがバルトロのカツラ付けとひげ剃りにやってきて、支度のため別の部屋に行き、わざと食器をこわします。割れる音に驚き「高価な食器を割った」とバルトロが部屋を飛び出した隙に二人は愛をささやきます。

(10)私の心に愛が芽生えて(ロジーナ)

「私の心に愛が芽生えて、私の宝リンドーロ、あなたは私の心に火をつけたの、もう夢中なの、私の苦しみをお知りになり、どうかお救い下さい」

フィガロはバルトロの鍵束からバルコニーの鍵を持ってきて伯爵に見せます。そこに音楽教師のバジリオが入ってきます。3人は仰天しますが、偽弟子ドン・アロンゾ(伯爵)は素早く豪華な財布をバジリオに渡し、大金を受け取ったバジリオは、何が何だか分からず大病にされたまま帰っていきます。フィガロはバルトロにカツラをつける作業を始めます。

(11)さて、ドン・バルトロさま(バルトロ、伯爵、ロジーナ、フィガロ)

「さて、ドン・バルトロ様」、「しっかりつけてくれ」フィガロはバルトロの目が届かないようにさえぎり作業します。二人は稽古に見せかけ、駆け落ちの約束をします。「ロジーナ、真夜中にあなたを連れにここへ来ます」「真夜中きっかりね、あなたと一緒に逃げるのね、待ち遠しいわ」フィガロはバルトロの注意を引かせるため「痛い、目にものが入った、吹いて下さい」と、注意をそらそうとしますが、老獪なバルトロは、怪しみ、二人の後ろに近づきます。フィガロは合図を送りますが二人は気づかず「愛しい人、あなたの手紙は私の変装が悟られないようにと」、「なに変装だと、悪党めら、わしは怒ったぞ、出ていけ、怒りと侮辱で爆発しそうだ」バルトロに変装を気づかれ、二人は追い出されてしまいます。バルトロはロジーナとの結婚を急ぐためバジリオを呼びに行かせます。

<第2場>

バジリオがやってきて、貰った豪華な財布に伯爵の紋章があったことから「偽音楽教師は伯爵に違いない」と告げます。バルトロはあわてて「今夜中に結婚式を挙げてしまおう」とバジリオに公証人を呼びに行かせます。そしてロジーナに「お前の恋人は、実は、お前を伯爵のものにするため芝居をしているのだ」と偽音楽家(伯爵)から貰った手紙を見せます。だまされたと思ってしまったロジーナは、怒りと悲しみのあまり「夜中に駆け落ちする手はずになっていた、バルコニーの鍵を持っていった」と話し、バルトロとの結婚を約束してしまいます。望みが叶ったバルトロは兵隊を呼びに行きます。真夜中になりリンドーロ(伯爵)とフィガロが梯子を登ってバルコニーから入ってきます。ロジーナは「あなた方は私をだまして伯爵に売りつけるひどい人達です。一緒に逃げることなんか出来ません」と二人をなじります。リンドーロは「実は、私がその伯爵なのです。伯爵の身分の私を愛する人でなく、私自身を愛してくれる人かどうか知りたかったのです」とうち明けます。ロジーナは驚きと歓喜に身を震わせます。

(12)ああ何という驚き(ロジーナ、伯爵、フィガロ)

「ああ何という驚き、あなたご自身なの、どうしよう、うれしくて気が変になりそう、あなた、あなたと妻だなんて、何という幸せ、あなた」、「もういい、なんとすばらしい瞬間、俺は恋に勝利した」、フィガロは「さあ早く逃げましょう、急がないと私の計略は水の泡になってしまう、門のところにランプの明かりと2人の人影がみえる、早く梯子の方に」

3人は逃げようとしますが、梯子が取り外されていて外には出られません。そこへ公証人を連れてバジリオが入ってきます。伯爵はバジリオに高価な指輪を与え、公証人とバジリオを証人として結婚の署名をしてしまいます。兵隊を連れたバルトロが入って来ましたので伯爵は身分を明かします。もうだれも手が出せません。バジリオは「ロジーナは未成年ですから結婚は無効です」と抵抗をしますが、公証人は結婚の成立を認めます。がめついバジリオは「ロジーナの財産は持たせない」と言いだします。伯爵は「持参金は入らない」と言い、バルトロは「ロジーナの財産が手に入るなら」と渋々承知します。

(13)詰まるところわしがが全く間違ったのだ(全員)

「詰まるところわしが全く間違ったのだ、お前まで裏切りおって」、「殿様の贈り物には逆らえません」、「間抜けだった、結婚させるために梯子をはずしたようなものだ」、「全く無益な用心だ」、「私の役目は終わった」、「永遠の愛と誠実で幸福になろう」

バジリオは、梯子をはずしたことが2人を結婚させるはめになった事を嘆き、皆から「無益な用心だった」とからかわれ、「愛と誠実が幸福を」との全員の合唱で幕がおります。

 

(約30年前モーツァルトは「セヴィリアの理髪師」の後編のような「フィガロの結婚」を制作していますが「フィガロの結婚」の4年前にパイジェッロが「セヴィリアの理髪師」を製作しています)

 

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