「私なりのオペラ名作選」そのストーリーと名曲

 

      歌劇「マノン・レスコー」のストーリー    

 

作曲     ジャコモ・プッチーニ

初演    1983年 トリノ・レッジオ劇場

時代場所  1700年代世紀前半アミアン、パリ、アーヴル、アメリカ

第一幕    アミアンの広場に面したホテルの前

ホテルの前に置かれたテーブルで学生達や若い女性達がふざけ合っている。親から修道女になるよう云われアミアンに来たマノンは、ホテルの前で学生デ・グリューと出会い、ほのかな恋心を抱きます。美しいマノンを愛妾にしようと企てる同行の老人・財務官ジェロントは、マノンの兄レスコーの機嫌を取り、気にしながら、ホテルの主人に馬車を用意させ、「今夜パリに行こう」とマノンを誘っています。それを知ったデ・グリューは「あんなおいぼれに美しい花が折られてよいか」と仲間に忠告され、駆け落ちを決意します。躊躇するマノンを説得し、二人は仲間の用意した馬車でパリに逃げます。マノンがいなくなり大騒ぎになります。兄のレスコーは「パリに行ったに違いない、そこを探そう」とジェロントに話し、二人はあとを追います。

第二幕   パリにある老財務官ジェロントの家のマノンの部屋

駆け落ちした二人はパリで見つかり、デ・グリューと別れたマノンは老財務官ジェロントの愛妾となって毎日豪華で贅沢な生活を送っています。パトロンの老人ジェロントは若い愛妾のマノンに何かと気を遣っていますが、マノンは老人との贅沢な生活も退屈になり、デ・グリューと一緒に暮らした甘い日が忘れられず有名なアリア「華やかに着飾っても」を歌います。

華やかに着飾っても  (ソプラノ:マノン・レスコー)

「あのやわらかなレースの中の華やかに飾られた寝台の中も、死んだように冷たい、私を凍らせてしまう、私がほしいのは激しい愛撫、火のように燃える唇、焼きつくす熱い抱擁。それなのに、今あるものは別なもの。人里離れた白い家よ、私に思い出させておくれ、安らぎと愛に満ちた、夢のように楽しかったあの家の頃を」。兄レスコーにデ・グリューの消息を尋ね、今もマノンを思っていることを知り会いたくてなりません。突然デ・グリューが部屋に現れます。お互いの心を知った二人は熱く抱擁します。そこへジェロントが入ってきました。マノンは「私を自由にしてほしい」とジェロントに云いますが聞き入れません。マノンは「その見にくい顔を見てご覧」と鏡を投げつけ、あざけ笑います。老人は怒りを抑え皮肉な別れの言葉を言って立ち去ります。デ・グリューは「早くこの家を出よう」とマノンをせかせますが、マノンは宝石や贅沢な生活に未練が残り躊躇します。「女故に恥ずべき生活に落ちるが、会えば愛の虜になる」と自棄になるデ・グリューを見て、逃げる決心をします。そこへ兄のレスコーが「ジェロントが警官を連れて来た、早く逃げろ」と知らせます。マノンは宝石類をまとめ持ち出そうとして手間取り、警官い捕まり連れて行かれます。ジェロントは薄笑いを浮かべ、デ・グリューは剣に手をかけますがレスコーが止めます。

第三幕 早朝のアーヴル港

(寵愛したマノンの裏切りは老人の財務官にとっては「可愛さあまって憎さ百倍」です。その仕返しがマノンの国外追放「宝石を持ち出そうとした罪」です)

国外追放となった女性たちの囚人の中にマノンのみすぼらしい姿があります。女囚達は港に設けられた獄舎につながれてアメリカに追放する船出を待っています。恋人のデ・グリューと兄のレスコーはマノンを救う機会を狙っていますが警備が厳しく助けることができません。女囚達が船に積み込まれるときが来ました。マノンは別れを悲しみながら船に野って行きます。いたたまれなくなったデ・グリューは船長に一緒に連れて行ってくれとひれ伏して「見てくれ、私は正気じゃな」を歌います。

見てくれ、私は正気じゃない、 (テノール:デ・グリュー)

「見てくれ、私は正気じゃない。どんなに涙を流して哀願しているか、この涙を見てくれ、どんなに慈悲を求めているかを。聞いてくれ、水夫にでも何でもいい、どんな卑しい仕事でもする、お願いだ、一緒に連れてってくれ、一緒に行けるだけで幸せなんだ、承知してくれ」船長は願いを聞き入れデ・グリューを船に乗せます。

第四幕  アメリカの荒涼とした砂漠

アメリカのフランス領に着いた二人は、追われる身の上となり、追手を恐れ荒涼とした砂漠をさまよい、マノンは飢えと寒さで気を失い倒れてしまいます。デ・グリューはマノンを「どれほど愛しているか」といって勇気付けます。彼のやさしい励ましに気を取り戻しマノンは「泣いているの」と尋ね、「のどが乾いて苦しい、休ませて」と訴えます。デ・グリューは休める場所と水をを探しに行きました。一人になったマノンは急に寂しくなって有名なアリア「一人寂しく」を歌います

棄てられて、一人寂しく

「あれた荒野にたった一人、寂しく棄てられ。恐ろしい。苦しみにさいなまれ、見捨てられて。死にたくない、ああ、死にたくない。ここは安らぎの地と思ったのに。美しさが不幸を呼び、恐怖に火をつけ、あの人から引き離そうとする。過去がよみがえる。何もかも終わってしまったわ、安らぎはお墓。死にたくない」

戻ってきたデ・グリューはマノンを抱きしめ、死人のような冷たい頬を悲しみます。死期を悟ったマノンは接吻を求め「死んでも、愛は変わらない」と云って息を引き取り、デ・グリューは悲嘆にくれ幕が降ります。

 
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