「私なりのオペラ名作選」そのストーリーと名曲

 

          喜歌劇「こうもり」のストーリー

 

作曲    ヨハン・シトラウス

初演    1874年アン・デヴァ・ウィーン劇場

時代場所  ウイーンに近い温泉町

登場人物  

資産家アイゼンシュタイン(br)、その妻ロザリンデ(s)、メイドのアデーレ(s)、ロシアの若い貴族オルロフスキー公爵(ms)、刑務所長フランク(br)、声楽家アルフレート(t)、アイゼンシュタインの友人(こうもり博士)ファルケ博士(br)、弁護士プリント、アデ−レの姉イーダ、看守フロッシュ

第1幕 アイゼンシュタイン家の広間

庭先から「僕の小鳩、いとしのロザリンデ、もう一度抱きしめたい」と昔の恋人を慕う歌が聞こえてきます。メイドのアデーレはバレリーナの姉イーダから「今宵のオルロフスキー公爵の夜会に行かないか。奥様のドレスを借りて」との誘いの手紙をもらい「どんな言い訳で外出を認めても貰おうかしら」とうきうきしながら掃除をしています。「ロザリンデだなんて、アルフレートだわ、スキャンダルになるわ」とロザリンデが入ってきます。アデーレが急に泣きだし「伯母が病気になったので外出させてください」と嘘を言って許しを願います「主人は役人を罵倒した罪で明日から5日間監獄に入るの。お前はお留守番」と拒まれ、泣き声で「伯母様にはもう会えない」と出て行きます。そこへ夫のアイゼンシュタインが弁護士プリントと一緒に帰ってきました。「お前の弁護が悪いから5日が8日になってしまった。へぼ弁護士め」、「侮辱だ、訴える」と言い争いが始まり、弁護士は怒りながら帰っていきます。友人のファルケ博士が訪れ、「明日刑務所に入ればよい。バレリーナの子ねずみチャン達が沢山来る、女房に内緒で楽しくやろう」とオルロフスキー公爵の夜会に誘います。3年前、仮装舞踏会で酔いつぶれ、アイゼンシュタインのために「こもり博士」のあだ名が付いてしまい、その「仕返し」を今宵の夜会で果たそうと企んでいます。アイゼンシュタインは「この懐中時計で釣ればいちころだよ」とその気になり「奥さんには刑務所に行くと云って、必ず来てくれ」とファルケが帰ります。アイゼンシュタインは「粗末な服装では粗末な牢屋に入れられる。一番立派な服装で行けば一番よい牢屋に入れる」といって着替えにいきます。ロザリンデは夫のいない留守にアルフレードが忍んできたらと心配になり、アデーレに外出を許します。アデーレは大喜びです。正装に着替えたアイゼンシュタインがうきうきしながら現れ、ロザリンデにやさしく「一人で寂しいだろうが」と繕いの慰めを云います。ロザリンデは「あなたなしで」で寂しさを「やるせない思い」から、一人になって起きる期待で急にはしゃぎ出す心情を歌います。

あなたなしで・・やるせない思い(s)

「あなたなしで8日間も、寂しくてどう暮らせばいいの、この辛い苦しみ、朝のコーヒーもあなたのカップは空っぽ。この苦しみ、この悩み」、「や、る、せ、ない思いがこの胸を締め付ける」から急にはしゃぎ出し、アイゼンシュタインとアデーレも一緒になってはしゃぎ、「昼食も一人で、夜は寂しさで張り裂けそう」、「こ、の、くるしみが、胸を締め付ける」でまた3人ははしゃぎ出し、アイゼンシュタインとアデーレは今宵の夜会に胸を躍らせ出て行きました。「何か楽しみがあるのかしら」と不審に思っているところへアルフレードが現れ、「元気付けにはこれに限る」とアイゼンシュタインのガウンをはおり、置いてあった酒を持って「灼熱の恋もまやかし」を歌い、「一夜を楽しもう」と迫ります。「歌われると決心が鈍るわ」とロザリンデ。

(t)、「灼熱の恋もまやかしの夢、永遠の誓いも所詮は絵空事、錯覚と分ったとき、酒が慰めてくれる、ままにならない事は忘れて、ともに飲もう」「私も浮かれてきたわ」、「ままにならない事は忘れて、ともに飲みましょう」と寄り添い二重唱になります。そこへ刑務所長フランクがアイゼンシュタインの逮捕にきました。「私はアルフレードだ」、「いまさら逃げても無駄です」、疑われては大変と「お願い、今だけアイゼンシュタインになって」とロザリンデが寄り添い、仲睦ましい振るまいに、アルフレードは喜んで嫌がるロザリンデを愛撫し、成り行き上、収監に応じてしまいます。

第2幕 夜会が開かれているオルロフスキー公爵の広間

夜会に集まった人達が「豪華な晩餐、楽しいひととき」を合唱し踊っています。

(合唱)、「今日は豪華な晩餐、食べ物は一流、飲み物はすばらしい、夢のような華やかさ、退屈する人は誰もいない。楽しいひとときを楽しもう」。ロザリンデの衣装を着たメイドのアデーレは女優オルガと名乗りバレリーナの姉イーダと一緒に来ています。ファルケ博士は二人を公爵に紹介した後、「面白くない、何をやっても退屈だ」と話すオルロフスキー公爵に、「殿下、余興に(こうもりの復讐)を用意しています。「実は女優のオルガは今日の主役の小間使で、この芝居の脇役です」などと話しています。そこへフランスのルナール侯爵との触れこみでアイゼンシュタインが入ってきました。「殿下、主役の登場です」と耳打ちし、アイゼンシュタインを公爵に紹介します。そこでオルロフスキー公爵は、一計を案じ、アイゼンシュタインにウオッカをしこたま飲ませる「客を呼ぶのが大好き」を歌います。

(mz)、僕は客を呼ぶのが大好き、朝まで無礼講、だが私は退屈なんだ、だが客が退屈すると放り出す、なぜかというと各人各様に楽しむのがここのルールだからだ、僕から酒を注がれ、もう飲めないというやつは放り出す、なぜかと言えば、各人各様の楽しみのルールに違反する、私の楽しみは私と酒を酌み交わすことだからね」。公爵にウォッカを何杯も飲まされたアイゼンシュタインは「ひどい目にあうなあ、これがロシヤ流かい」と酩酊状態で、女優オルガのテレーゼに紹介されます。テレーゼは「ご主人様だわ、牢屋にいるはずなのに、どうしよう」、「ここがウィーンかたぎのみせどこよ」とイーダ、「あ、家内の衣装、うちのメイドに似ている」と驚くアイゼンシュタイン。オルロフスキー公爵は「博士、面白い事があるといったな」、「これから幕が開きます」とファルケ、「皆さん、この方は、女優のオルガをメイドといった、けしからん」と公爵。メイドと云われたアデーレはアイゼンシュタインに向かって「侯爵様、もう少しお利口さんになって」を歌います。

(s)侯爵様、、もう少しお利口さんになって見る目を養って、手はこんなに華奢で、足もこんなにきれい、くびれた腰、この言葉遣い、ギリシャ系の美しい顔、こんな小間使はいませんわ、メイドが好きだから誰を見てもメイドに見えるのね。さあ、間違いをお認めになって、本当におかしいは、ハハハ、私笑ってしまいますわ、ハハハ」。シャグラン騎士と名乗った刑務所長のフランクが来ました。フランス人同士ということでルナール侯爵のアイゼンシュタインに紹介され、二人は知っているフランスの単語を並べてとんちんかんな会話をして意気投合します。ファルケ博士から招待状を貰い、ハンガリーの伯爵夫人として仮面をつけたロザリンデが入ってきました。ファルケ博士に「招待して下さったのね。うれしいわ、ありがとう」。「まあ、主人やアデーレがいる、嘘をついてここに来たんだわ、とっちめてやる」。公爵によって酩酊にさせられたルナール侯爵ことアイゼンシュタインは伯爵夫人のロザリンデに一目ぼれしてしまい自慢の懐中時計を振る回し「10分で落として見せる」と、ふらふらしながらロザリンデに近づきます。「あの時計を証拠として奪ってやるわ、さあ頑張ってねあなた」とロザリンデ。アイゼンシュタインは伯爵夫人のロザリンデに懐中時計を見せびらかしながら「何とこの優雅さ」と口説きはじめます。

(二重唱)、何とこの優雅なものごし、美しい足、くびれた腰、いっぱいキスしたい」、「この豚箱め、ここで楽しんでるなんて、逃げられないように証拠を取って、とっちめてやるから」、「あなたはまるで美しい魔法だ。どうか隠してる仮面を取ってください」「あらいけません、仮面を取るのは礼儀に反しますわ」、「じっと俺を見てる、もうこっちのものだ」。「ああ、目がくらくらして胸が高鳴りますわ、どうしたんでしょう」、「それは恋のときめきです」、「いえ持病ですの」。「ではこの時計で脈を取リましょう」、「5,6,7,9」、「あれ間違った7と9の間は8です」、「おかしいわ、交替して今度は私が時計を、あなたは5分間この胸で脈を取って下さいませんか」時計を渡したアイゼンシュタインは喜んでロザリンデの胸に顔を埋め、「1,2,3,4,・・30,60・・」と脈を数えます。ロザリンデは立ちあがり「この時計いただくは」と懐中時計を胸の中に入れてしまいます。「逃げられた上に時計を取られた、高くついた」とアイゼンシュタイン。「あの噂の美人は、ハンガリー人かしら」、「仮面を取って貰おう」との声に仮面を取られては芝居が台無しになってしまう公爵は「無礼です。私の夜会は仮面をつけたままでよいのです」。「誰も証明できない」の声にロザリンデは「証明できますわ、私のふるさとの調べで」、音楽が鳴り「チャールダシュだ」とアイゼンシュタイン。ロザリンデは「ふるさとの調を聞くと」を歌います。

(s)、ふるさとの調を聞くと、懐かしさで涙が込み上げ、心はハンガリーの大地に飛んで行く、すばらしいふるさとは、日の光が鮮やかに輝き、森は緑に燃え草原は微笑みかける、幸せなときを過ごしたあの大地よ、お前の美しい風景が私の心を満たす」「ハンガリーの情熱の踊りチャールダーシュを踊りましょう」。「疑いは晴れました」と全員がチャールダッシュを踊り出します。「夕食の準備が出来ました」の声に一同晩餐の席につき公爵から「私を喜ばす面白い話しを」と、こうもりのあだ名の由来を促さたアイゼンシュタインは愉快そうに「数年前、宮殿の仮装パーティーで妙な格好のこうもりに扮したファルケ君が少々酩酊していましたので路上に置き去りにしておいたものだから扮装のまま帰宅することになり、笑い話の種にされて、それから[こうもり博士]のあだ名がついてしまった訳であります」と話します。「で、彼はまだ復讐を」、「私は隙を見せませんので。最後に笑う者の勝ちです」とアイゼンシュタイン。オルロフスキー公爵は「さあ、乾杯しよう」と有名な「シャンパンの歌」を歌い出し、アデーレ、アイゼンシュタインと続き全員で合唱します。

(重唱)シャンパンの歌「ぶどうの酒で極楽の命が湧く、皇帝達は名誉ばかりかぶどう酒も大好き、シャンパンはワインの王とたたえられ皇帝はシャンパン一世と名づけられた。ワインの王をたたえよう、乾杯、シャンパン万歳」「どこの国でも、どんな悩みも泡と消えさせる」「僧侶も個室で杯を重ね、鼻が赤くなる」「ワインの王をたたえよう、乾杯、シャンパン万歳」。合唱が終わりそれそれカップルとなって打ち解け合います。「まず最初にキスをしてそれから深い友情の輪を作りましょうと」と合唱し、バレーの踊り子達と一緒になって踊り出すの大騒ぎが終わり「豪華な晩餐、楽しい一時」と合唱して楽しいパーティーが盛り上がっていると時計の鐘が6つ鳴り、慌てたアイゼンシュタインと刑務所長のフランクはそれぞれ帰って行きます。「刑務所の場が楽しみだと」公爵とファルケ。「豪華な晩餐、楽しい一時」の合唱が続き幕となります。

第3幕 刑務所の一室

へべれけに酔った看守のフロッシュが入ってきて云いたい放題の雑言を云っています。そこへ夜会でしこたま酔ったフランクが帰ってきました。二人の酔っ払いの頓珍漢な会話が続きます。そこへアデーレとイーダがシャグラン騎士と名乗った刑務所長のフランクを尋ねて来ました。アデーレは素性を明かし夜会で約束したように女優として舞台に立てるよう面倒を見て欲しいと「私が田舎娘に扮したら」を歌います

(s)「私が田舎娘に扮したら短い服でリスみたいに跳ね回り、りりしい若者には指の中から流し目を送り前掛けの紐をむしりながらその若者を物にするの。女王に扮したときはしとやかな足取りと威厳で会釈すると家臣達はかしこまって私の歌を聞くの、私は微笑で国を治める完璧な女王様。パリの女性のときは伯爵夫人、若い伯爵が云いよるの、貞節な私も気分が揺らぐの、突然主人が入ってきた、ああどうしよう、許して、と謝ると観客が涙にくれるわ。この演技を見たら私の才能を惜しいと思われますわ」。「もちろん君を女優に仕立てる」「うれしい」。そこへルナール侯爵ことアイゼンシュタインが夜会服のまま牢屋に入るために来ましたので二人を隠すよう看守に命じ牢屋に入れます。刑務所長は身分を明かします。アイゼンシュタインも身分を明かすと「それは嘘だ、昨夜、夕食中、部屋着の彼を逮捕した。既に牢屋に入っている」と出て行きます。アイゼンシュタインの顧問弁護士が「あなたにたのまれた」と云って入ってきます。アイゼンシュタインはロザリンデが別の男と一緒にいたことに気がつき弁護士の服装を「借りたい」と部屋を出ます。看守が「依頼の弁護士が来ている」と牢屋からアルフレードを連れて来ましたが誰もいません。そこに事態を心配したロザリンデが来ます。浮気を突き止めるため弁護士に変装したアイゼンシュタインが入ってきます。二人はそれに気づきません。「調書を取りましょう」、アルフレードは「ロザリンデと夕食をともにしたら、行きがかり上、逮捕された」などを話し「火遊びが過ぎたのでは」と言われ「私の弁護をするのでしょう」。アイゼンシュタインははらわたが煮え繰り返る思いを鎮めながら調書を取ります。ロザリンデは「本当に食事をしただけです、主人は信用しないと思いますが」、「自業自得です」、「主人はひどい人、昨夜も若い女と楽しくやっていた。帰ってきたら目の玉をくりぬいて離婚してやる」と話し、「浮気はしまてせんか」、「何てことおっしゃるの、あなたは主人の見方なの」、そのうち怒りが爆発し変装を外したアイゼンシュタインは驚く二人に向かい「お前達に騙された、裏切られた、私は断固お前達に復讐してやる、復讐だ」と怒り狂って二人を追い駆け回します。ロザリンデは「これでも復讐するつもり」と時計を見せます。「あの女性はお前だったのか、俺の目は節穴だ」。そこに刑務所長が「どちらかはっきりしましたか」と入ってきます。「俺はアイゼンシュタインではない。誰も証明出来ない」といっているところに牢屋からアデーレとイーダが出てきて「ご主人様」と叫びます。「外にも証明する人がいますよ」と昨夜の夜会に集まった人達やオルロフスキー公爵が入って来ます。「こうもりさん、ゆるしておやり、憐れな彼は十分懲りたはずよ」、「どういう事か教えてくれ」ファルケ博士が「こうもりが復讐したのさ。もう終わった安心しろ、君に一杯食わしたかったのさ」、一同「我々も協力」、「殿下も」、「そう」、「アレーデは」、「協演よ」、「夕食騒動も」、「劇中劇さ」、「ガウンは」、ロザリンデが「小道具よ」、「心配が晴れて、安心した」、アレーでが心配そうに「私のこともお芝居なの」、皇帝が「私がパトロンになろう」喜ぶアデーレ、アイゼンシュタインはロザリンデにひざまずき「ロザリンデ、僕を許しておくれ、全てシャンパンがやらせた事だから」、ロザリンデは「今日の騒ぎは何もかもシャンパンがさせたこと、でもシャンパンのお陰で主人は前非を悔い改め、私に誠を誓ってくれた。声を合わせてワインの王をたたえましょう」と「シャンパンの歌」を歌い一同合唱して幕になります。

 

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