「私なりのオペラ名作選」そのストーリーと名曲
歌劇「カルメン」のストーリー (フランス語)ビゼー
<初演>1816年2月20日(江戸時代後期)ローマ・アルジエンティナ劇場
<登場人物>
ジプシー女カルメン (メゾソプラノ)
衛兵伍長ドン・ホセ (テノール)
闘牛士エスカミーリョ (バリトン)
ホセの許嫁ミカエラ (ソプラノ)
カルメンの女仲間フラスキータ(ソプラノ)
カルメンの女仲間メルセデス (ソプラノ)
ならず者の密輸人ダンカイロ (バリトン)
ならず者の密輸人レメンダード(テノール)
<時代・場所>1820年頃のスペイン、セヴィリア
(1)前奏曲
前奏曲、間奏曲とも名曲で独立して演奏されます
<第1幕>19世紀の初期のセヴィリアの街の広場。
左側にタバコ工場、右側に衛兵の詰め所がある。衛兵達が退屈そうに街の往来を眺めている「街を行きかう人よ」そこに、衛兵伍長ドン・ホセの許嫁ミカエラがホセを訪ねてやってきましたが、衛兵達にからかわれ逃げ去ります「小鳥が飛び去った」。衛兵の交替を告げるラッパが鳴り響き、子供達の後ろから「兵隊さんと一緒」、ドン・ホセら衛兵が登場し、交替します「可愛い娘が訪ねてきたぞ」。
工場の昼休みの鐘が鳴り、若者達が、お目当ての女工を迎えるため門の前に集まり、タバコを吹かしながら女工達が出てきます。
(2)鐘が鳴った(女工と男達)
「鐘が鳴った、俺達は女工さんを待っていた、愛の言葉のために」、女工達が「タバコの煙が静かに昇る、恋人の甘いささやき、心がはしゃぐ」。男達はカルメンを探します「カルメンはどこだ、姿が見えない」。
妖艶で情熱的なジプシー娘カルメンが口に赤いの花をくわえ、肩を揺すりながら登場します。男達はカルメンを取り囲みます「色よい返事を」。カルメンは「いつになったら好いてくれるかだって、知らないよ、そんなこと」自分を無視するホセを流し目し、こぶしを腰に当てて歌います。(あまりにも有名なメゾソプラノの名曲、マリア・カラスはソプラノで演じた)
(3)恋は野の鳥 「ハバネラ」 (カルメン:メゾソプラノ)
「恋は野の鳥、すぐ逃げる、逃げてもまたもどる、ままにならぬのがボヘミヤの女、そちらが嫌でも好きになる、私が好いたら用心しな」
ホセの前に立ち止まり、口にくわえた赤い花を無視するホセに投げ「お前は愛に呪われた」といって女工達と一緒に工場に戻ります。
ホセはその花を拾い上げます。ミカエラがホセの母から預かったお金と手紙を渡すためきました。ホセはあわてて花を懐に隠します。ミカエラはホセにお金と手紙を渡し「お母さんからのキスよ」と恥ずかしそうに接吻し帰ります「お母さんへのキスをして」。手紙には除隊したらミカエラと結婚するよう書いてあります「なんていい子だろう」。情熱的なカルメンの魅力に心を奪われる予感がしたホセは、懐から赤い花を取り出し「魔女め」といって捨てようとしたとき、工場から女工達が二派に分かれての大喧嘩をしながら出てきます。衛兵が止めに入ります。隊長はホセに命じ工場での出来事を調査させ、顔に傷を負わせたカルメンを縛ります。騒ぎが収まり、牢送りする手続きのためホセを見張りに残し衛兵達は詰所に消えます。ホセと二人になったカルメンは縄をとかせようとホセを誘惑し口説きます。
(4)セヴィリヤの砦の近くの酒場で(カルメン、ホセ)
「セビリヤの城壁の砦の近くのリーリャス・パスティア(店の名前)で、踊るの、飲むの、一人はいやよ、恋人連れて、言い寄る男は1ダース、でも気に入る者は一人もいない」、「黙れ、しゃべるな」、「あんたにしゃべってなんかいないわ、思ってるのよ、慕うのは勝手、決まりは無いはずよ、それは中尉でも少尉でもないわ、伍長さんよ。ジプシー女の情熱が燃えさかる、あんたが好きよ」。ホセは妖艶なカルメンの魅力に惹かれていきます。「もし僕がお前を愛したら、本当にお前は僕を愛してくれるのか」、「当たり前でしょ、大好きよ」、「砦の店へ一緒に行こう」、「うれしい、バスティアで飲みましょう、踊りましょう、遊びましょう」、「約束するね」、「約束するわ」。
カルメンに口説かれてしまった純情なホセは縄をときます。牢送りと決まったカルメンは縛られているようなふりをして、見物人の中をホセに連行されていきます。ホセは打ち合わせどおりわざとカルメンに突き倒され、そのすきにカルメンは逃げます。見物人が騒然とするなか、第1幕が終わります。
(5)間奏曲
<第2幕>あれから2ヶ月後。夜のバスティアの店の中。
(ホセはカルメンを逃がした罪で2ヶ月間の営倉送りになってしまいました。カルメンは逃亡の後、ジプシーのならず者達と密輸入の仕事をしています)
ならず者のたまり場バスティーアの店でジプシー達がにぎやかに踊っています。客の兵士たちの中に下士官のスガニがいます。カルメンもジプシーの女仲間メルセデス、ラスクキータと一緒に来ています。カルメンは「ジプシーの歌」を歌い、二人の女仲間と踊りに加わります。(情熱的なジプシー娘を思わせる名曲)
(6)ジプシーの歌(カルメン)
「ジプシー娘は、激しく叩くタンブリンやかきむしるギターの音やカスタネットに、心が騒ぎ、銀や銅の指輪を輝かせて、踊り狂うのが愉しいのさ」
閉店間近になり主人は客を帰そうとします。下士官のスガニがカルメンを誘いますがカルメンは断ります。「ホセが釈放になり、ここに来る」と知らされたカルメンは大喜びし、ホセを待ちます。そこにきらびやかに着飾った闘牛士のエスカミーリョが入ってきて、ジプシーや兵士達の歓迎を受け、乾杯し、歌います(トレアドールと歌う有名な曲)
(7)闘牛士の歌(エスカミーリョ:バリトン)
「紳士、淑女、兵士の皆さん、乾杯しましょう、闘牛士は兵士と気が合います、戦いが楽しいからです。競技場は興奮した観客で超満員、恋がお前を待ってるぞ、トレアドール、突然、観衆は静まる、闘牛の突進、馬が倒れる、ピカドールを引きずる、槍を受けて血の海だ、お前の出番だ、剣をかまえよ、トレアドール」
エスカミーリョはカルメンを誘うが断られ、客と一緒に引き上げます。カルメンと二人の仲間だけになったところに、密売や窃盗をやっているジプシーのならず者ダンカイロとレメンダードが来て「うまい仕事がある、女が必要だ」と持ちかけますが、「恋をしているから」と断り、相手は牢に入れられた伍長だといいますので、一同は失笑します。そこにホセが「止まれ、誰だ、竜騎兵だ」と歌いながらやってきます。ダンカイロが「奴を仲間に引き入れろ」と言って4人は別室に隠れます。一人残ったカルメンは再会を喜び、「踊るは」と言ってカスタネットを探しますが見あたらず、陶器の皿を割ってカスタネットにみたてて打ち鳴らし
(8)ラッ、ラア、ラア、ラア(カルメン)
「ラッ、ラア、ラア、ラア」と口伴奏しながら踊り、嬉しさを表わします。その時帰営のラッパが鳴り、ホセは「帰らねば」と告げます。カルメンは憤慨して、「勝手に帰れば」と怒ります。ホセは聞いてくれと、軍服から彼女が投げた赤い花を取り出し、牢の中でのカルメンへの思慕を歌います。
(9)お前が投げたこの花は「花の歌」(ホセ:テノール)
「お前のくれたこの花は、寝る時も抱いていた、萎れても、甘い香りに私は酔いしれた、望みは今一度お前に会いたかった、狂おしいほど愛しい」
カルメンは「本当に愛しているなら、仲間に入って、山で楽しく過ごそう」と誘いますが、ホセは「脱走兵にはなりたくない」と決別を告げ帰ろうとします。そこへ下士官のスガニが入ってきてカルメンの奪い合いとなり、軍刀を抜いての争いが始まります。ならず者達が止めに入りスガニを外に追い出します。カルメンやならず者たちは「気ままな山での生活は、本当に自由で楽しい、一緒にやろう」と合唱し、上官との決闘の争いを起こしてしまったホセは軍隊に戻る訳にもいかず仲間入りを決意します。
(10)間奏曲
<第3幕>
山の中の荒れ地にある、密輸入や窃盗など危ない仕事をするならず者達の隠れ場。
荷物を担いだ連中が集まっています「ふもとにはうまい儲け仕事が沢山あるが、度胸がいる」。ホセはカルメンやならず者達と暮らしていますが、いつも年老いた母親の事を案ずるので、気ままなカルメンは嫌気がさしています。仲直りを願うホセにカルメンは「いやよ、お母さんのところに帰ったら」と言いますので、また喧嘩になります。女仲間のメルセデス、ラスクキータがカード占いを始め、いい卦が出たと喜んでいます。カルメンもカード占いの中に入りますが、何回やっても「死」の卦しか出ません。
(11)混ぜて、切って、「カルタの三重唱」(カルメン、メルセデス、ラスクキータ)
「混ぜて、切って、そっちが3枚、こっちが4枚、カルタよ、占っておくれ、私たちの未来を、私を愛するのは誰」、「若い恋人と出だわ、好いて好かれて、恋愛三昧、何百人を従えた騎兵隊長よ」、「私は年寄りの大金持ち、お城のような館で、お妃ように大切にされて」、カルメンは「スペード、死の札だわ、カルタは正直、死ぬのは私が先、そして彼、20回やっても、死を告げるわ」
やがて一同は、ホセを見張りに残し仕事に行きます「カルメンが役人の面倒を見てくれたら仕事はうまく行く」、ホセも見張り場に行き、誰もいなくなったところへミカエラがやって来ます「ここが密輸人達の隠れ家ね、あの人はここにいるのだわ、お母さんの言いつけよ、怖がらずにやるは」。と言って「ミカエラのアリア」で知られる有名なソプラノのアリアを歌います。
(12)何で恐れることがありましょう「ミカエラのアリア」(ミカエラ:ソプラノ)
「何で恐れることがありましょう。強がってもだめ、ここは死ぬほど怖い、でも勇気を出すわ、ああ神様ご加護を。あの人を自堕落にしたあの女に会える、そしていってやるわ」。
岩の上にいるホセを見つけ喜びますが、ホセが人影に発砲したので、驚いて身を隠します。人影は闘牛士のエスカミーリョでした。「好きな女、カルメンに会いに来た、俺はカルメンに心を奪われた。お前がカルメンに恋をし脱走した兵隊さんかい、移り気なカルメンは俺と恋に落ちる」と言い、嫉妬したホセと決闘になります。銃声に驚いたカルメン達が駆けつけ、二人が争っているのを見て止めに入ります。エスカミーリョは「勝負はまたにしよう」と言い残し、一同を闘牛場に招待して去ります。この時、ならず者の一人がミカエラを見つけ連れてきました。ミカエラは母親が危篤であることを話し、ホセは驚いて山を下ります。遠くからエスカミーリョの歌声が聞こえ、カルメンは歌声に引きつけられます。
(13)間奏曲
<第4幕>
セビリアの闘牛場前の広場。売店が建ち並び、人々が闘牛士の行進を見に集まっています。有名な行進曲と合唱のなか闘牛士の一行が来ました。
(14)闘牛士の行進曲
(15)闘牛士をたたえる合唱
「来た、来た、闘牛士のクワドリーリャだ、帽子を投げ上げろ、いけ好かない警察隊だ、警察隊をやっつけろ、チューロ達だ、バンデリリューロ達だ、ピカドール達だ、ああエスカミーリョだ、闘牛にとどめを刺しにやってきた、エスカミーリョ万歳」。派手に着飾ったカルメンを伴って人気絶頂のエスカミーリョが来ました。
エスカミーリョはカルメンに愛の言葉を残して闘牛場に消え、群衆も続いて中に入っていきます。一人になったカルメンにメルセデスが「ホセが来ている、気をつけて」と言いますが、カルメンは鼻であしらい闘牛場に入ろうといたときホセが現れ復縁を迫ります。
(16)あなたね、俺だ(ホセとカルメンの二重唱)
「あなたね」、「俺だ」、「来ることは分かっていたわ、命に気をつけろと忠告を受けたけど、私は逃げない」、「俺は何もしない、もう一度やり直そう、お前が大好きだ」、「もう好きでなくなったの」、「俺は山賊になってもいい、お前のためなら何でもやる、棄てないでくれ」、「終わったのよ」、場内から群衆の声「見よ、血に染まった剣をめがけて闘牛が突進する」。「どこへ行く」、「離して」、「彼奴のところに行くのだな、そんなに好きか」、「死ぬほど好きよ」、「これが最後だ、俺についてこい」、「くどいわ、お前から貰ったこんな指輪なんか入らないわ」といって指輪を投げつけ、場内に向かいます。場内から群衆の「トレアドール、剣をかまえよ、恋がお前を待っている」の歓声が聞こえます。逆上したホセは「畜生め」と持っていた短刀をカルメンに向け、刺し殺します。そしてホセは「私が殺した。逮捕してくれ」とカルメンに取りすがります。場内から「闘牛を刺し殺せ」という歓声と、ホセがカルメンを刺し殺すのが重なる劇的な場面で、歌劇「カルメン」の幕が下ります。