「私なりのオペラ名作選」そのストーリーと名曲

 

         歌劇「ドン・ジョヴァンニ」のストーリー

 

作曲     アマデウス・モーツァルト

初演     1787年プラハ国立劇場

場所     スペインのある町

主な登場人物

稀代の色事師ドンファン伝説のモデル貴族ドン・ジョヴァンニ(br)。その忠実な従者レポレッロ(br)。ドン・ジョヴァンニの夜這がもとで父を殺され、復讐を誓う騎士長の娘ドンナ・アンナ(s)。その許婚ドン・オッターヴィオ(t)、ドン・ジョヴァンニと結婚し3日目に棄てられ恨む良家の娘エルヴィラ(s)。ジョヴァンニの餌食にされそうになる結婚を控えた村娘ツェルリーナ(s)、その許婚農夫マゼット(b)、ドンナ・アンナの父騎士長(b)。

第1幕

<ドンナ・アンナの邸>

レポレッロは邸の庭で「夜も昼も苦労して」と愚痴を言いながらドンナ・アンナの部屋へ忍び込んだ主人ドン・ジョヴァンニの見張りをしている。

夜も昼も苦労して、雨の日も風の日も、食うも寝るもままならぬ。俺も貴族になりたい。召使は真っ平だ。、美女と部屋の中、おいらは外で見張り役、あんたはご立派なご主人様。おや誰か来た、見つかったら大変、見つからないようにしよう」そこに「悪党よ、出てきて」とドンナ・アンナの叫びに父の騎士長が駆けつけ決闘になるがジョヴァンニは騎士長を刺し殺して逃げてしまう。、父を殺されたアンナは悲嘆にくれ、婚約者ドン・オッターヴィオに「父の敵を討って」と哀願します。

<夜明け前の街道>

「あの不実な男を見つけたら八つ裂きにしてやる」と男に棄てられた女性が通りかかるのを、「可哀想に」とお為ごかしで口説こうと声をかけたジョヴァンニは結婚して三日目に棄てたブルゴスの良家の娘ドンナ・エルヴィラと知って驚き、この場をレポッレロに押し付けて逃げてしまいます。困ったレポッレロは懐から帳面を出し歌います。(カタログの歌:バリトン)

「奥様、これが旦那の女のカタログでございます。私が作ったものですがね、見てください。イタリアでは640人、ドイツでは231人、フランス100人、トルコで91人、スペインではもう1000と3人、金髪、栗毛、麻色、太いの、細いの、年増の女、、金持ちだろうが、醜かろうが、スカートさえはいていれば誰でもいいんです」といってうまく逃げてしまいます。エルヴィラはジョヴァンニへの復讐を誓います。

<ジョヴァンニの別邸の近くの村>

村の若者達が今宵結婚するマゼットとツェルリーナを楽器や踊りで祝っています。そこを通りかかったジョヴァンニは可愛いツェルリーナを見て、ものにすべくツェルリーナを残し全員を邸に招待します。農夫マゼットはジョヴァンニの企みを見ぬき抵抗しますが相手は貴族です。刀で脅され追い払われてしまいます。二人っきりになったジョヴァンニはツェルリーナを口説きます。(「手を取り合って」二重唱)身分違いの貴族に口説かれたツェルリーナはその気になってしまいます。

「さあ手を取り合ってあそこに行こう」、「行こうか、どうしようかしら」「君の運命が変わるよ」、「ああ、どうしよう」、「さあおいで」、「心が震えるは」、「さあ行こう」、「マゼット許して」、「さ行こう」、「行きましょう」。とツェルリーナの手を引いて行こうとしたとき、エルヴィラが現れ「こんな裏切り者に付いて行ってはだめ」とツェルリーナの手を取って連れて行ってしまいます。残ったジョヴァンニは忌々しげに帰ろとしたとき、ドンナ・アンナとドン・オッターヴィオに出くわしました。暗闇で目隠しの仮面をしていたため、ドンナ・アンナは昨夜自分を抱き、父を殺した男の顔を知りません。二人はジョヴァンニに助太刀を依頼します。そこへエルヴィラが現れ二人はいさかいながら去っていきます。ドンナ・アンナは声を思い出し、仇がドン・ジョヴァンニかも知れないと気づき、再度オッターヴィオ「あなたもお分かりでしょう」と復讐の決意を促し退場します。

あなたもお分かりでしょう。誰が私の名誉を犯そうとしたか。あなたに復讐を頼み、あなたは復讐を誓ってくださいました。もしあなたの心に怒りが弱まることがあれば、老いた父の血で地面が染まったことを思い出してください」一人残ったオッターヴィオは

あの人の心の安らぎこそが私の安らぎ、彼女の喜びが私の生き甲斐、彼女のを歎かせるくらいなら死んだほうがましだ。彼女の悲しは私の悲しみ、彼女に喜びが無かったら私もない」と歌い去っていきます。ジョヴァンニとレポレッロが入場し「計画どおりみんな城で酔っぱらています」とレポレッロは企てがうまく運んだ事をジョヴァンニに報告します。ジョヴァンニは上機嫌になり有名なアリア「シャンペンの歌」を歌います。

酒が頭になるまで飲ませろ、街で見かけた娘は全部連れて来い。何でも好き勝手に踊らせてやれ。おれは片隅であの娘やこの娘と楽しみ、明日の朝には10人の名前をカタログに加えるぞ」

<ドン・ジョヴァンニの邸の庭園>

一方ドン・ジョヴァンニの邸の庭園では先ほどのことで怒っているマゼットにツェルリーナが「そんなに私が悪いなら、私をぶって」と有名なアリア「ぶってマゼット」を歌い謝っています。

ぶって、ぶってよ、マゼット、あなたのツェルリーナを。ぶたれても、私、羊のようにおとなしくしてるは、髪をむしり、目をくりぬいてもいいわ、その手にキスしてあげるは、お願い機嫌を直して、夜も昼も楽しく過ごしましょうよね」マゼットはもうでれでれです。ジョヴァンニが城に帰り宴はたけなわです。そこに仮面をつけたドンナ・アンナ、オッターヴィオ、エルヴィラの3人が宴に加わり、ジョヴァンニに「あだ討ちだ」とピストルを突きつけ、村人も3人に加勢しますが、ジョヴァンニはうまく逃げてしまいます。

第2幕

<街の通り> ジョヴァンニとレポレッロはお互い服装を取り替え、レポレッロに成りすましたジョヴァンニはエルヴィラの女中を口説こうとエルヴィラの宿の窓の下で女中を呼び出すアリア「窓辺にいでよ」を歌っています。偽ジョヴァンニのレポッレロはエルヴィラに追われ逃げます。

窓辺に姿を見せておくれ、いとしい君よ、私の悩みを聴いておくれ、駄目なら死んでしまいたい、君の唇は蜜より甘く、君の心はやさしさが溢れている。どうか私に冷たくしないでおくれ、姿だけでいいから見せておくれ」。そこへジョヴァンニに復讐しようとマゼットが武器を持って村人達ときましたが、偽レポレッロに武器を奪われ、しこたま殴られてしまいます。農夫マゼットの悲鳴を聞き駆けつけたツェルリーナは「もう焼きもちを焼かず、あなたがおとなしくしてたら、治してあげる」とマゼットの手を乳房に触れさせる有名な薬の歌(ソプラノ)を歌い介抱します。

あなたがおとなしくしてたら、とてもよいお薬をあげるは、自然のお薬で飲みやすいの、薬屋にはないお薬よ、バルサモのようなもの、私が持ってるの、欲しければあげるわ、どこにあるか知りたいの、ここよ、ドキドキしているここよ、ここを触ってみて」マゼットはツェルリーナの胸に手を触れ一変に元気になり去っていきます。

<ドンナ・アンナ邸>

邸の広間では父の遺体のミサが行われ嘆き悲しんでいます。エルヴィラに追われた偽ジョヴァンニのレポレッロはドンナアンナ邸の庭先に迷い込み見つかってしまい、、ドンナ・アンナ、オッターヴィオ、マゼット、ツェルリーナに取り囲まれ仇を討たれそうになります。レポレッロをジョヴァンニと信じこんでいるエルヴィラは「私の夫ですどうか許して下さい」と助命を懇願しますので騒ぎはますます高まります。怖くなったレポレッロは扮装していたマントを脱ぎ、「悪いのは旦那さまで、皆様お許しを」と命乞いしながらうまく逃げてしまいます。一同は「ジョヴァンニの犯行は明確になった復讐しよう」と広間を出ます。一人残ったエルヴィラは「あの恥じ知らずの心は私を裏切った」と憎いジョヴァンニを救いたいと思う複雑な心情を吐露します。

神様、なんというむごい、恐ろしいことをあの人はしてしまったのでしょう。まもなく天の怒りがくだる事でしょう。あわれなエルヴィラ、なぜにこの嘆き、この苦しみが湧くのか」「あの恥じ知らずの心は私を裏切り私を不幸にした。でも裏切られ捨てられても彼の身を案じてしまう。私の苦痛を思えば心は復讐に燃えるが、あの人の苦境を見れば心は乱れてしまう」

<墓地>(月明かりで騎士長の石像が見える)

レポレッロは墓地に逃げ込みそこでドン・ジョヴァンニと出会い、お互に服装を着替え、「いうまく切り抜け命拾いした」、「街で出会った女と愛し合った」と笑いながら話していると「その笑いも夜明け前に消えるだろうー」の声が聞こえます。レポレッロは「亡霊が現れた」と怯えています。辺りを見まわしたジョヴァンは騎士長の石像を見つけ、おびえるレポレッロを脅し、石像の碑文を読ませます。「ここで必ず復讐する」の銘文にジョヴァンニは愉快そうに「一緒に食事をしようと伝えよ」とレポレッロに命じます。レポレッロは恐々「騎士長の石像様」と始めるジョヴァンニとの二重唱で石像を邸に招待します。

ええ、騎士長様の石像様」「旦那様、心臓が止まりそうでこれ以上云えません」、「最後までやれ、さもないと刺し殺すぞ」、「えらいことになった」、「なんと愉快な遊びだ」、「ええ、騎士長様の石像様、あなた様は大理石で、ああ旦那様、私をじーと見てます」、「刺し殺すぞ」、「は、はい。石像様、私ではありませんよ、手前の主人があなた様と食事をしたいそうで」。石像はゆっくりうなずきます。「ひゃー、うなずいた。大理石の首が動くんです、旦那様見てください」「大理石の首が動いた」、ジョヴァンニは石像に「話せるなら返事をしてくれ」、「行くぞー」。レポッレロは恐怖で腰が抜けてしまいます。ジョヴァンニは「こんな事もあるのだな、帰って晩餐の準備をしよう」と墓地を去ります。

<ドンナアンナの邸の一室>

オッターヴィオは歎き悲しむアンナを慰めようと愛を口にします。「こんな悲しいときに愛を口にするなんて」と躊躇するドンナ・アンナにオッターヴィオは「あなたは僕の心がわからない。つれない方だ」と迫ります。ドンナ・アンナはオッターヴィオに「いいえ私はあなたのもの」と愛情が不変である心情を伝えます。

いいえ私はあなたのもの、どうか私がつれないなどとおっしゃらないで、私がどんなにあなたを愛しているかご存知でしょう、私の真心も。どうかあなたの苦しみを鎮めてください、私が苦しみのあまり死ぬのをお望みでないならば」

<ドン・ジョヴァンニの邸の広間>

晩餐の準備も整い楽士が音楽を奏でている。レポッレロがつまみ食いをして、ジョヴァンニに「口笛を吹いてみろ」と云われ、目を白黒しているところへエルヴィラが入ってきて「改心するよう」訴えるが、ジョヴァンニは「女、酒、万歳」と叫び取り合いません。そこに「ずっし、ずっし」の音がします。恐ろしさでレポッレロは卓の下に隠れます。石像が「天国で食事をする者は、地上では取らない」と云って入ってきました。石像はジョヴァンニを食事に招待し、握手を求めます。ジョヴァンニはそれに応じます。石像に握られた手は振り払うことができません。「悔い改めよ」と石像。「死んでも改悛しない」と傲慢な態度で応じるジョヴァンニ。恐れ震えるレポッレロ。地獄からの合唱と燃え盛る炎。ジョヴァンニは石像に引かれ、悲鳴とともに炎の中に消えて行きます。ドンナ・アンナ、オッターヴィオ、ツェルリーナ、マゼットが裁判官を連れてやってきました。出来事の一部始終をレポッレロから聞き、一同は「当然の報い」と喜び、オッターヴィオは結婚を申し入れ、ドンナ・アンナは「1年待って」と、ツェルリーナとマゼットは幸せな暮らしを、エルヴィラは修道院へ行こうと、レポッレロはもっとましな主人を探そうと合唱して幕が下ります。

 

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