「私なりのオペラ名作選」そのストーリーと名曲
歌劇「フィガロの結婚」のストーリー
作曲 アマデウス・モーツァルト
初演 1786年ウイーン・ブルク劇場
時代場所 17世紀中頃セビリア郊外のアルマヴィーヴァ伯爵邸
主な登場人物
アルマヴィーヴァ伯爵(br)同夫人ロジーナ(s)伯爵の小姓ケルビーノ(ms)伯爵の従僕フィガロ(br)伯爵夫人の侍女スザンナ(s)女中頭マルチェリーナ(ms)医師バルトロ(b)音楽教師バジリオ(t)裁判官ドン・クルッツオ(t)庭師アントニオ(t)その娘バルバリーナ(s)
第1幕 伯爵の城内の一室
明日の結婚を控えたフィガロは、伯爵から与えられた部屋の大きさを測りながら「寝台はここ」ど云い、婚約者のスザンナと喜び、ふざけて「リンリン、ドンドン」と歌う。
もし奥様が夜中に・・ディンディン・ドンドン(二重唱:フィガロ、スザンナ)
「奥様がお前をリンリンとお呼びになると二歩で行ける、次にドンドン、三歩も跳ねりゃ殿様の前だ」、「そうね、お前は遠くへお使いに行ったとき、殿様がリンリンとお呼びになる、殿様を戸口に、私は三歩で殿様の前」、「なに」、「その先が聞きたいのね」、「早く云え」、「私がそういうことをすると疑ってるのね」、「疑いと不安で寒気がするよ」。「殿様は私に気があるから、寝室に近い部屋を下さったの」と聞き、怒ったフィガロが歌う。(初夜は殿様が相手をするという初夜権を廃止したが、殿様は今晩それを行使したいのです。そうはさせじとフィガロは策を練ります)
殿様、踊りたければ(バリトン:フィガロ)
「殿様、踊りたければギターを弾きましょう、ダンスの跳び方も教えしましょう。たくらみは、そしらぬ振りして探り、知恵を絞り、策を練り、いじめ、とぼけて、必ずひっくり返して見せますよ」。二人が出て、女中頭のマルチェリーナと医師のバルトロが登場します。フィガロはマルチェリーナに金を借りていて返せないときは結婚するという証文を入れています。マルチェリーナは20歳も年下のフィガロと結婚するつもりでいますので二人の結婚を止めさてようとバルトロに頼みます。セルビアにいたときフィガロにひどい目にあわされたバルトロは、復讐するチャンスが来たと勇んで歌います。
ああ復讐とは楽しみだ(バス:バルトロ)
「ああ、復讐だ。復讐は賢者の楽しみ、恥辱や侮辱を晴らさないのは意気地がないからだ。今度のは難しいが、計略・知略、読みと判断、法律の全てを調べ、言葉をこじつけ、必ず成し遂げるぞ」。(「セビリアの理髪師」で、バルトロはロジータを自分のものにする計画をフィガロの策略で伯爵に取られた恨みがあります。ロッシーニの「セビリアの理髪師」はフィガロ初演の30年後ですので疑問に思いましたが、同名のオペラが5年前にパイシェルロの作で上演されていましたので、後編の意味合いがあったのかも知れません)バルトロが去った後、スザンナが来てマルチェリーナと言い争いになりマルチェリーナは出て行きます。伯爵の小姓ケルビーノが入ってきてスザンナに訴えます。
僕には自分がどうなったのか分からない(メゾソプラノ:ケルビーノ)
「僕には自分がどうなったのか分からない、燃えたかと思うとすぐ冷めてしまう。女を見ると赤くなり、胸がときめく。恋と聞いただけだ胸が高鳴り、寝ても覚めても恋を語る」
突然伯爵が入ってきます。スザンナは慌ててケルビーノを椅子に隠します。伯爵がスザンナを口説いていると、そこに音楽教師のバジリオが入ってきます。伯爵は慌てて椅子の陰に、ケルビーノは出てきて椅子に座りスザンナが部屋着を上から覆います。バジリオは「ケルビーノが奥様の部屋に忍んで行くのを見た、二人は怪しいのでは」と話します。かっとなって「なんだと」と隠れていた伯爵が飛びだしたので「私はとんでもない時に来た」とバジリオ。伯爵を隠したとバジリオに思われたスザンナは気絶してしまいます。伯爵とバジリオはスザンナを椅子に寝かせます。気を取り戻したスザンナは「ここはどこ、何してるの、失礼ね」、「介抱してただけ、あなたの不名誉になる事はしてませんよ」と意地悪く云ったバジリオは伯爵に「申し上げたことは私の憶測で」、伯爵は「あの女たらしの小僧を追い出すのだ」、「可哀想に」、伯爵は「お前の従妹の部屋に」と歌います。
お前の従妹の部屋に鍵が (バリトン:伯爵)
「お前の従妹の部屋に鍵がかかっていたので叩いたらバルバリーナが出てきた、様子が変だったので中に入って、あたりを見回し、覆ってあったテーブルの布をめっくてみたら、あの小僧が隠れていた」と言って、伯爵が椅子に懸けてある部屋着をめくるとケルビーノが現れ「なんだこれは」、「恐ろしいことが起きそうだわ」、「読めたぞ」と伯爵、「美しい婦人にはよくある事で」とバジリオ。そこへ村の青年達を連れてやってきました。青年達は伯爵が初夜権を廃止した事を讃へます。伯爵は、やむなく、「もちろん初夜権は行使しない」と言ってしまい、口惜しがります。村人が去り、伯爵はケルビーノに「軍隊に入れ」と命令し、フィガロが悲しむケルビーノをからかう有名なアリア「もう飛ぶまいぞ」を歌います。
もう飛ぶまいぞ(バリトン:フィガロ)
「もう飛べなぞ蝶々君、昼も夜もうろついて女を悩ませていたが、羽根飾りのついた帽子
、このカールも終わりだ、鉄砲を担ぎ、剣をつけ、山超え谷超え行進し、銃声、銃弾の響きは音楽だ、ケルビーノ進め勝利へ」
第2幕 伯爵婦人の部屋
幕が開き、伯爵婦人は窓辺に寄り添って、伯爵の愛がうせてしまった日々を嘆き「安らぎを与えたまえ」と有名なアリアを歌います
安らぎを与えたまえ(ソプラノ:ロジーナ)
「愛の神様、安らぎをお与え下さい。この苦しみから、この嘆きから。どうかあの方を私にお返し下さい。それとも死をお与え下さい」。夫人の侍女スザンナが入ってきて「伯爵が誘惑する」と訴えます。そこにフィガロが伯爵は初夜権を行使する腹である事を話し、3人は伯爵を陥れる相談をします。今夜、夫人に逢引の約束をする偽手紙を書き、それをバジリオから伯爵に渡るようし、伯爵が夫人の相手を取り押さえに行っている間に結婚式を挙げる準備をし、またフィガロが匿っているケルビーノをスザンナに似せて女装させ、伯爵と偽スザンナを庭で密会させようというものです。フィガロが退室しケルビーノが入ってきます。夫人にも恋心を抱くケルビーノは有名なアリア「恋とはどんなものか」を歌います。
恋とはどんなものか(メゾソプラノ:ケルビーノ)
「恋とはどんなものか知っているあなた方、私は恋をしているのでしょうか。私の感じを申します。あこがれの気持ちは、ときには喜びとなり、ときには苦しみとなります。火と燃えてもすぐ冷めます。昼も夜も、ため息をつき、胸が高鳴り、安らぎません」。スザンナは早速ケルビーノの女装に取りかかり名高いアリア「さあ、膝をついて」を歌います。
さあ、膝をついて(ソプラノ:スザンナ)
「さあ膝をついてじっとして、こっちを向いて、よく似合うわ、私を見て、奥様はいらっしゃらないはよ、両手を組んで、歩く様子を見るから立って、ご覧下さい、可愛いこと、女の子が夢中になるのも分かるわ」。そこへ伯爵が帰ってきました。ケルビーノを衣装部屋に隠し、スザンナも隠れ、夫人が扉をあけます。鍵がかかっていることを不審に思った伯爵は夫人を問詰めます。うろたえる夫人に、フィガロが書いた逢引の手紙を見せ、さらに問詰めます。そのとき衣装部屋から「どたん」と大きな音がします。ますます疑惑を深め夫人を問詰めますので夫人は「スザンナです」と嘘を言ってしまいます。伯爵が夫人を連れて衣装部屋を開ける道具を取りに出た隙にスザンナは衣装部屋に入ります。ケルビーノはスザンナが止めるのを聞かず、窓から飛び降りて逃げてしまいます。伯爵と夫人が戻ってきて追及された夫人は「ケルビーノが入っている」と白状し、衣装部屋を開けるとスザンナが出てきたので、伯爵は夫人に詫びます。そこに庭師のアントニオが「今庭に飛び下りた者がいて鉢を壊していった」と入ってきます。フィガロがそれは俺だと膝をさすりごまかします。アントニオと入れ替わりにマルチェリーナ、バルトロ、バジリオが入ってきて、「借金を返さないときはマルチェリーナと結婚する」との証文を見せ、フィガロに結婚を迫ります。
第3幕 婚礼の準備が出来た広間
スザンナと伯爵夫人は「スザンナが伯爵に庭で密会することを承知し、伯爵夫人がスザンナ役をやる」と相談します。伯爵はスザンナに「ひどいやつだ、どうしてわしをじらしたのだ」、「女はすぐにはハイとは言いませんのよ」、「庭に来るね、間違いないね」、「はい、間違い御座いません」、「満足に、胸が膨らむわい」、(スザンナは、だまして悪いけど伯爵さま、恋はいたずらものと独り言を云う)。スザンナはフィガロとすれ違いに「あなた、裁判に勝ったわよ」と言い残しますが、フィガロは飲みこめません。伯爵は「裁判に勝ったとはどうゆう意味だ。判決はわしにとって好都合だ」
こちらが指をくわえて(バリトン:伯爵)
「指をくわえて召使の幸福を何で見られよう。わしの欲しい宝物とあんな卑しいや奴が結ばれる。そうはさせんぞ。ずうずうしい奴め、復讐してやる事が喜びだ」。伯爵が去り、バルバリーナとケェルビーのが入ってきて、「伯爵に分からないよう女装して夫人に花束を贈ったら」と云って出て行き、代わって伯爵夫人が入場し「遅いわ、どうしたのかしらスザンナは、思えば大胆な計画だわ、闇にまぎれて、私がスザンナの服を着てあの子が私のを着て行く。愛してくれたのは最初だけ、裏切って馬鹿にして、ひどい人」と歌い有名なアリア「どこに行ったのあの頃は」を歌います。
どこに行ったのあの頃は(ソプラノ:ロジーナ)
「どこに行ったのあの頃の喜び、誓った言葉。涙と悲しみの日となった今もあの頃の楽しい思い出が消えないのなぜ。悩みながらも愛し続けている貞淑な私に免じて、あの人の心が変わってくれればよいのに」。夫人と入れ替わり伯爵、マルチェリーナ、バルトロ、ドン・クルッツオ、フィガロが入場します。裁判官のクルッツオがフィガロに契約の通り「金を返すか、マルチェリーナと結婚するか。どちらかだ」と云い、全員がこれに賛成します。困ったフィガロは、「結婚は両親の承諾がいる」と行方不明の両親を持ち出して抵抗し、生まれた頃の服装や腕のアザを見せますと、以外にもマルチェリーナとバルトロの子供である事が判明しました。
坊やこうして抱かれたら (圧巻の6重唱)
マルチェリーナは大喜びで抱きしめ。伯爵はしらけ、バルトロは複雑な心境です。そこに金を用意したスザンナが入ってきて、マルチェリーナとフィガロが抱き合っているのを見たスザンナは「結婚する気なの、この浮気者、もう知らない」と怒って出て行こうとします。フィガロは「待って、聞いたくれ」、「なによ」とフィガロをひっぱたきます。「話しがややこしくなった」と伯爵。「あんな女が私を苦しめる、怒りで震える」、「お前のお母さんになるんだ、これがお父さん」、「お父さんとお母さんなの」と喜び合い、伯爵、裁判官は「こんな不快は耐えがたい」重唱が終わり、マルチェリーナとバルトロは「この際結婚しよう」ということになり、一同が退場します。伯爵をとっちめようと庭に誘い出す手紙を書くために伯爵夫人とスザンナが入場し、美しい二重唱を歌います。
手紙の二重唱 (二重唱:ロジーナ、スザンナ)
「風に寄せる」、「やさしいそよ風」、「そよ風が」、「今宵さわやかに」、「さわやかに」、「松の木陰に」、「松の木陰に吹きましょう」、「あとはお分かりになるはずよ」、「そうですよね、お分かりになりますわ」。手紙を書き終え夫人が自分のピンで封をします。やがて結婚式の宴会が始まります。村娘達と一緒に女装したケルビーノが伯爵夫人に花束を渡し夫人はキスをしケルビーノは思いを遂げます。アントニオが「あれはケルビーノだ」と云い、夫人はケルビーノを罰しようとしますがバルバリーナが「伯爵からキスされた」と訴え、罰するのをやめます。スザンナは例の手紙をこっそり伯爵に渡します。伯爵はうれしくてなりません。ピンで指を刺してしまいフィガロがそれを見ます。伯爵の宣言で盛大な宴が始まりました。
第4幕 深夜の庭
バルバリーナが松明を持って「スザンナに渡すようにと伯爵から託ったピンをなくした」と云って探しています。それを聞いたフィガロは「スザンナが伯爵とここで逢引する」と疑い。それを見届けるため証人にバルトロとバジリオを連れて現れ、「準備は出来た、そろそろ来るはずだ。売女め、よりによって結婚式の日に伯爵と逢引とは、女は信じられん」と歌い、アリア「目を見開け愚かな男達」と裏切られた男の恨みを歌います。
目を見開け愚かな男達よ
「目を見開け愚かな男達よ、女とはなんだ。あいつらの魔法で目がくらみ、女神と呼んで贈り物をし、誘って爪で引っかく梟、棘あるバラ、ずるい鳩、嘘吐き、騙し、陰謀の親分愛なんか感じない、憐れみなんか持たない奴だ、この辺でやめよう皆さんご存知のことでから」。そこへ衣装を取り替えた夫人とスザンナがやってきてスザンナがフィガロに思いを寄せる「やっとあの人の腕に抱かれる時が来たわ。」と歌い、美しいアリア「さあ早く来て愛しい人」を歌います。
さあ早く来て愛しい人よ (ソプラノ:スザンナ)
「さあ早く来て愛しい人よ、月が夜空に昇らないうちに、暗いく静まっているうちに。小川のせせらぎ、風の戯れ、花は咲き、草が囁くここに早く来て、この繁みの中であなたにバラの花飾りをあげたいの」。スザンナが夫人に変装している事に気ついたフィガロは、わざと「奥様」と言って口説き、夫人を口説いていると思ったスザンナは怒ってフィガロを引っ叩きますが、「変装していることは知っていた、お前の声は忘れない」とフィガロが云い仲直りします。伯爵はスザンナに変装した夫人を口説いています。夫人は逃げて、隠れます。フィガロは「この辺りで芝居は打ち上げにしましょう」と、スザンナの伯爵夫人向かって大きな声で「奥様、あなたは私の命です。安らぎを下さい」。夫人のスザンナが「お前の好きなようにして」「なに、奥だと、悪党め、しまった武器を忘れた」と伯爵。二人は「苦しみを楽しみにしましょう」と小屋に入ります。伯爵はフィガロを捕まえ
誰か武器を持ってこい (6重唱)
「誰か武器を持ってこい」、「殿様お許しお」とフィガロ。「みんな集まれ、こやつがわしを裏切り、恥を欠かせた。どうするか見ておれ」、一同は「これは驚き、本当とは思えませんな」伯爵は「奥よ、抵抗せず出てきなさい。これがわしを裏切った女だ。許されると思うな」一同は「おゆるしを」。そこへ本当の伯爵夫人が「私がお許しを願いましたら」と現れます。「おお、なんだこれは、夢か。奥、許しておくれ」と伯爵は夫人に平謝りします。「今日の1日は、騙しや、浮気や、ふざけ、いろいろあったが。愛は実を結んだ、さあ皆さん祝いの席で楽しくやりましょう」との合唱で幕が下ります。
策を労しても物事は計算通りにはいかないも、右往左往するが最後は思惑通りになるという愉快なオペラです。私めら男に取りましてはいろいろ教えられます。