私なりの「オペラ名作選」そのストーリーと名曲

 

            歌劇「ボエーム」のストーリー

 

作曲 ジャコモ・プッチーニ

初演 1896年トリノ・レッジオ劇場

1930年頃、パリのラテン区に住むその日暮らしの若い芸術家達とその愛人の物語

第1幕 貧しい若者の芸術家が共同生活しているパリの屋根裏部屋

貧しい青年詩人とお針子が、ろうそくの明かりが縁で、薄暗い部屋の月明かりの中、互いが自己紹介するうちに尊敬と愛情が芽生えていく心温まる名場面、アリア「私の名はミミ」はすがすがしくも涙がにじむ名曲です。

創作活動をしている詩人のロドルフォと画家のマルチェルロはあまりの寒さに「原稿を燃やそう」と詩人の原稿を暖炉に入れ暖を取っているところに哲学者のコルネルリーが帰えり、しばらくして、「うまく金を稼いだ」と薪や食物を沢山抱えた音楽家のショナールが帰ってきます。四人は大喜びしながら食べ始めたところへ大家が溜まっている家賃を取りに来たので四人は慌ててしまいますが、うまく大家をおだてて追い返し「夜の街に出て楽しもう」と出かけます。詩人のロドルフォは「締め切りの原稿を書をかなければならないから下で待っててくれ」と一人原稿を書いているところに隣家に住むミミが「明かりを貸して下さい」と、ろうそくの明かりを借りにきます。胸を病んでいるミミは階段を昇ってきせで咳き込みかるいめまいを起こします。ロドルフは優しくミミを椅子にかけさせ「気付けに飲みませんか」とぶどう酒を渡し、彼女の美しさに見とれます。元気をとりもどしたミミは明かりのついたろうそくを手にドアのところまできて「かぎを忘れてた」ことに気づき、立ち止まります。そのとき、ミミのろうそくが消えてしまい、そこにきたロドルフの火も消えてしまいます。二人は暗がりの中で鍵を探すうち手が触れます。はっとするミミの手をロドルフォはしかり握りしめて、アリアの名曲「冷たい手」を歌います

冷たい手 (テノール:「ロドルフォのアリア」)

「なんと冷たい手、暖めさせてください。月夜ですから月明かりの中で自己紹介します。私は貧しい詩人ですが愛の詩を書いているときはまるで王様のような豊かさです。夢と空想と、空に浮かぶお城のお陰で、私は百万長者になります。時々泥棒が来て私の宝石箱から宝石を全部盗んで行きます。たった今も美しい目という泥棒があなたと一緒に入ってきて、宝石は消えてしまいました。でも悲しくはないのです、そこはやさしい希望の住みかになったからです」などと自己紹介し、「お願いですから今度はあなたのことを聞かせてください」。これに応えてミミが、涙がにじむ感動の名曲「私の名はミミ」を歌います。

私の名はミミ (ソプラノ:「ミミのアリア」)

「はい、みなは私をミミと呼びますの、でも、本当の名はルチア、お針子をしています。絹に刺繍をするのよ。バラを作るときは慰められますの、愛や青春のことを話してくれますもの。ミサにはあまり行きませんが神様にはお祈りします。屋根と空しか見えない白い小さな部屋で私は一人ぼっちで住んでいますの。食事も一人、でも、雪の解ける季節は、最初の太陽は、私のもの。鉢のバラが芽吹き、花の香りは、なんって素敵でしょう。でも、私の作るバラは香りを持ちませんの。これで私のことは終わりです。こんな時間にご迷惑をかけにくる隣人です」とミミは自己紹介し、お互いの心に恋が目覚めます。下から仲間の「へぼ詩人」、「まだ原稿は出来ないのか」、「一人でなにをしてる」、「のろまめ」と怒鳴る声に、「だれですの」と窓のほうに行くミミ、「仲間です」、「二人でいる。カフェ・モミュスへ先に行っててくれ」と下にいる仲間に応え、ロドルフォは月光に浮かぶミミの姿にうっとりしながら「ああ、うるわしき乙女」と歌い、ミミとの「愛の二重唱」へとつづきます。

うるわしき乙女(愛の二重唱)

「ああ、うるわしき乙女よ、私が夢見ていたものがあなただということが分かったのです」ミミは感動して「ああ、愛、何て甘美でやさしい言葉、私は感動です」ロドルフォはミミに接吻しようとしますが、ミミは見を引きながら「だめですわ」、「あなたは僕のものだ」、「お仲間が待っていますわ」、「僕を追い払うの」、ミミはためらいながら「言っていいかしら」、「言ってみて」、「もしご一緒しに行くことにしたら」、ロドルフォはうれしくなり「ここにいた方が楽しい、外は寒いから」、「あなたのそばにいるから寒くないわ」「腕を貸して」、「はい、ご主人様」、「僕を好きかい」、「好きよ」。二人は夜の町に出かけます。

第2幕 カフェ・モミュス

貧しい画家に愛想をつかし今は老人をパトロンにする蓮っ葉ながら魅力的な女性ムゼッタが、偶然、昔の恋人に出会い、互いが未練に思っている事を知り、老人のパトロンをだまして仲直りする楽しい場面。ムゼッタが歌うアリア「ムゼッタのワルツ」は蓮っ葉な女性の可愛さと魅力がにじむ名曲。

二人は雑踏の中をカフェ・モミュスにきます。ロドルフォは友人たちにミミを紹介し一緒に楽しく食事を始めようとしたとき、画家マルチェルロの昔の恋人で、今は金持ちの老人の愛人になっている、ちょっと蓮っ葉ながら愛らしいムゼッタが派手ななりをして老人のパトロンと一緒にやってきました。ムゼッタはそこにマルチェルロがいるのに気づき、彼の気を引こうと有名なアリア「ムゼッタのワルツ」を歌います。

私が街を歩くと(ソプラノ:「ムゼッタのワルツ」)

「私が一人で街を歩くと、人は立ち止まり、頭のてっぺんから足の先まで、私を見つめるの、そして私の美しさに見とれるの。」「俺を椅子に縛ってくれ」とマルチェルロ、「そのとき私は人々の強い視線に酔うの、私の魅力に酔うの、周りの私への欲望が、私を取り巻き、私はそれを楽しむの」、「あの下品な歌は何だ」とパトロン、「私の胸はときめき震えるの」。ムッゼッタはマルチェルロがまだ自分を想っているかどうか知りたく仲間入りします。マルチェルロはムゼッタへの未練に耐えられず逃げ出そうとします。ムゼッタはマルチェルロが今も自分を想っていることを知り、老人から逃げ出す策を労します。「痛い」ムゼッタが叫びます、「どうした」とパトロン「ここが痛い」とスカートをたくし上げ、足をパトロンに見せます。「早く緩めて」、「おお、わが青春」足を見せられたパトロンは感激です。「足が痛い、早く靴を買ってきて」とパトロンに駄々をこね、靴を買いに行かせた隙に、ミミ達の飲食代をパトロンの老人の付けにし、ムゼッタと若者たちは雑踏に消えていきます。急ぎ靴を買って帰ってきた老人のパトロンは勘定書きを見せられ卒倒してしまいます。

第3幕  ダンフェール門の雪の夜明け

胸を病むミミとロドルフォとの切ない別れとムゼッタとマルチェルロの嫉妬による派手な喧嘩別れという対照的な二組の別れの冬の朝の哀愁に満ちた場面

雪の積もる夜明け、マルチェルロとムゼッタが働くキャバレーにミミがやってきてマルチェルロを外に呼び出し「ロドルフォとの愛の生活はもうおしまいなの」と訴えます。嫉妬深いロドルフォに疲れきっているミミを慰める言葉もありません。ミミの来る前に来ていたロドルフォが起き出して外に出で来ます。ミミは慌てて木陰に隠れます。ロドルフォはマルチェルロに「ミミは浮気な女なんだ」と歌います。

ミミは浮気な女、実はミミはひどい病気なんだ 

「ミミは誰にでも色目を使う浮気な女なんだ、伯爵の息子があいつに色目を使う、あいつはスカートをひらつかせ足を見せたり、気がありそうなそぶりをする」、「おまえは本当のことを言っていない」、「そうじゃないんだ、俺は世界中で一番ミミを愛してる」、木陰に隠れているミミは感動します。「なにを言うつもりなのかしら」とミミ、「実は、ミミはひどい病気なんだ、日増しに弱っていく。もうだめなんだよ」、「かわいそうなミミ」とマルチェルロ、「俺の部屋は北風が吹きこむ火の気もない暗い穴倉だ、ミミは笑ったり歌ったりしているが、恐ろしい病気なのだ、このままでは俺はミミを殺してしまう」。「どうしよう、私は死ぬのだわ」。木陰にいるミミのすすり泣きの声が聞こえ、ロドルフォは「そこに居たのか」と驚きます。ミミは静かに名曲アリア「さようなら」を歌います。

さようならあなた

「あなたの愛の呼び出しに喜んで出てきたあの寂しい部屋に一人帰ります。もう1度見てくれの花を作りに戻ります。さようなら、恨みっこなし。聞いてちょうだい、私の引き出しの中に金の腕輪とお祈りの本があるの、エプロンに包んでおいてね。後で門番に取りにやらせます。そうそう大事なことを忘れていたわ、枕の下にバラの花のボンネットがあります。もしよろしかったら、愛のしるしに残しておいてくださいね。さようなら、恨みっこなしにね」。そのときマルチェルロはムゼッタがよその男とふざけ合っているのに嫉妬し、二人は派手に喧嘩し始め、罵り合って別れてしまいます。「私達は春になったら別れましょうね」とミミとロドルホフォは寒寒とした冬の朝のもやの中に消えて行き幕が降ります。

第4幕 元の屋根裏部屋

伯爵の世話になっているミミがロドルフォ達の住む屋根裏部屋で皆が見守る中静かに息を引き取る悲哀の場面

昔の仲間たちが元の生活に戻っています。「ミミはどうしているのだろう」とロドルフォとマルチェルロは昔の恋人が忘れられず仕事が手につきません。

そこにコルリーネとショナールが帰ってきて、皆で子供のようにふざけ騒いでいるところにムゼッタが「ミミが死にそう、ここに連れてきたの」と飛び込んできます。皆は驚いているところへミミが運び込まれてきました。ミミは子爵の世話になっていましたがロドルフォを忘れる事ができずここにきたのです。ムゼッタは「私の耳飾を売って医者とお薬を」といい、マルチェルロと出て行きます。コルリーネも古外套を売りに行き、ショナールも外に出ます。二人になったミミとロドルフォは激しく抱き合い昔を懐かしく思う二重唱「みんな行ってしまったのね」を歌います

みんな行ってしまったのね 

「皆行ってしまったのね、眠った振りをしてたの、二人っきりになりたかったから、話したい事がたくさんあっるの、あなたは私の命」、「僕の美しいミミ」、「私まだ美しいかしら」、「日のでのように美しい」、「ボンネットだわ、私がはじめて入ってきたときのこと覚えてる」、「おぼえているさ」、「明かりが消えてしまったわ」、「鍵を無くしたんだ」、「冷たい手、私に暖めさせてください、私真っ赤だったわ暗くて見えないけど、そして私の手を取って」、よろけるミミをささえ「大変だ、ミミ」

ミミが激しく咳き込み、心配そうにロドルフォはミミを寝かせます。皆が戻ってきました。ミミはムゼッタが持ってきてくれたマフを喜び手を入れて、「眠くなった」と目を閉じます。ロドルフォはミミに陽射しがあたらないように窓に覆いをかけに行きます。そのときミミが息を引き取っていることに気づいたショナールがマルチェルロに告げます。ロドルフォもミミの死に気づき「ミミ」と絶叫して、亡骸にすがり、泣き伏し幕が降ります。

 

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